43-7
「ミューのこと、きらいー?」
「好きさ。友だちとしてな。俺とミューは友だちだろ?」
「うんー。友だちー」
この無垢であどけない少女に結婚は早すぎる。
「そうですか……」
ギザ卿は肩を落として心底残念そうにしていた。
名門貴族の縁者になれる絶好の機会だ。彼が必死になるのはよくわかる。
「結婚するおつもりになりましたら、そのときはぜひともミューとの結婚をお考えください」
「大人になったら結婚しよーねー」
「ミューが大人になるころには、俺より好きな人ができてるだろうさ」
「そんなことないよー。アッシュがいちばんー。ずっと待ってるー」
ほんとうにいじらしい少女だ。
そういうわけで、どうにか結婚の話は乗り切ったのであった。
その後、夕食を俺とプリシラ、ギザ卿とミューで食べながら、俺は王都グレイスへ行くことを話した。
ミューの表情が曇る。
「プリシラとアッシュ、遠くに行っちゃうのー?」
「わたしたちには大事な役目があるのです」
「さみしいー。行かないでー」
涙ぐむミュー。
あわあわと慌てるギザ卿が、ハンカチで娘の涙をぬぐう。
「ミューもいっしょに行くー」
「わがまま言っちゃいけないよ。ミュー」
「行くったら行くー」
ミューは涙をぽろぽろこぼしながらわがままを言い続けた。
娘に甘いギザ卿はミューを叱れず、困り果てたようすだった。
そんなとき、プリシラがこう言った。
「ミューさま。王都に着いたらお手紙を送ります」
「……お手紙ー?」
「それで、今度はミューさまがわたしに手紙をください」
「ミューがー?」
「王都にいる間、文通をしましょう」
それでミューは涙を流すのを止めた。
それから少しの間を置いて、ぱぁっと笑顔の花が咲いた。
「プリシラと文通するー」
「はいっ。文通しましょうねっ」
海を越えた文通か。
楽しそうだな。
娘の隣でギザ卿がほっと胸をなでおろしていた。
それから屋敷で一泊し、朝になって朝食をとった後、俺とプリシラはケルタスに帰った。
文通する約束をしたとはいえ、長い間俺たちと会えなくなるのがさみしいのだろう。ミューは門の前で俺たちの乗った馬車をずっと見送っていた。
「なるほどのう。エルリオーネ家にそのようなしきたりがあったとは」
ケルタスに帰り、『夏のクジラ亭』で克己の試練についてスセリとマリアに話した。
「だから二日も帰ってこなかったのですわね。心配しましたのよ」
それから試練の従者を務めた報酬としてギザ卿からもらった魔書『ゴスペル』をスセリに見せた。
スセリの表情がいつになく真剣になる。
「ほう、これは……」
次々とページをめくっていく。
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