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43-3

 ランフォード家を起こした稀代の魔術師スセリと、彼女がつくった魔書『オーレオール』についてかいつまんで説明する。


「わたくしが死んだ後の世で、不老を実現した魔術師の一族が生まれたとは……」


 エルは俺の話を聞いて心底驚いていた。


「稀代の魔術師の子孫よ。その力をどうか世のために役立ててくださいね」

「あ、ああ……」


 俺はうなずく。

 問題のスセリは明らかに自分の野心のために力を使うであろうことは黙っておいた。


「エルは幽霊なのー?」


 ミューが質問する。


「それに近い存在です。わたくしはこの古代人の遺跡の科学技術と己の魔法を使い、魂の複製をこのキューブに留めたのです。エル・エルリオーネ自身は遥か昔に肉体、魂共に失われました」


 どうやら彼女は『オーレオール』に魂を宿していたスセリと同じようなものらしい。

 複製ということは、目の前にいる彼女は偽物なのだろうか。

 ミューはつまらなそうな顔をしている。


「むずかしい話、よくわかんないー」

「わからなくて構いません。我が子孫よ。あなたがやるべきことは克己の試練を乗り越えることなのですから」


 遺跡の心臓部であるここに辿り着くことで試練は終わりかと思いきや、エルの口ぶりからするにまだなにかあるらしい。


「なにをすればいーのー?」

「まずは目を閉じ、あなたにとって一番大切な人の姿を思い浮かべてください」

「わかったー」


 目を閉じるミュー。

 彼女にそっと手をかざすエル。

 すると突如、エルの隣に思いもよらぬ人物が現れた。


「プリシラ!」


 それは俺のよく知る少女――プリシラだった。

 プリシラがどうしてここに!?

 エルが呼び出したのか!?

 俺は困惑する。


「プリシラー? どうしてここにいるのー?」


 目を開いたミューも不思議そうにしていた。


「わたしは最後の試練です。ミューさまはわたしと戦うのです」


 そう言うとプリシラはロッドを構えた。


「エル! プリシラを操っているのか!」

「従者は手出しは無用です」


 エルが魔法を唱えると、俺を囲むように半透明の障壁が現れ、プリシラに近づくのを阻んだ。

 まさかプリシラが巻き込まれるなんて……。

 そんなの、許すわけにはいかない!


「プリシラを試練に巻き込むな!」


 障壁をこぶしで叩くも、びくともしない。

 呪文を叫ぶも魔法は発動しなかった。

 エルは俺を完全に無視している。


「ミュー。手を出しなさい」


 エルに言われるままミューが手を出すと、その手のひらに短剣が現れた。

 きょとんとするミュー。


「その刃であなたの大切な人を貫くのです。これが最後の試練です」

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