42-3
そして翌日、俺たちは克己の試練に挑戦するため、古代人の遺跡へと赴いた。
遺跡は長い年月を経て自然に埋もれ、岩肌の露出した洞窟となっていた。
洞窟の入り口は機械の扉で閉ざされている。
「さあ、ミュー。扉に手を触れなさい」
ギザ卿が娘に促す。
ミューは特に怖がっているようすはなく、普段のぽわんとした表情のまま扉に近づき、そして小さな手で触れた。
途端、洞窟が周囲もろとも激しく揺れだす。
突発的な振動で揺さぶられる俺たち。
「はわわっ」
プリシラが転びそうになったのを俺が抱きとめる。
振動が収まる。
ギザ卿は盛大に転んでいた。
ミューもぺたん、としりもちをついており、きょとんとしている。
「とびらー、ひらいたー」
ミューの言うとおり、洞窟の扉が開いていた。
大きく開いた口の中は他の遺跡と同様、コンクリートと呼ばれる灰色の石材で造られた通路になっていて、電気仕掛けの白い明かりが等間隔に並んでいた。
外からうかがえる遺跡のようすはそれくらいだった。
「今さらですがギザ卿。無理に試練に挑む必要はないんじゃ」
「いえ、エルリオーネ家に生まれた者は皆、この試練を乗り越えてきました。むろん、私もです。愛しい娘とはいえ、ミューだけを特別扱いはできません」
とはいうものの、ギザ卿は今朝からずっと落ち着きがなかった。
やはり愛娘が心配なのだろう。
「アッシュさま。どうか我が娘を――ミューをよろしくお願いいたします」
その言葉を聞いたのは今日で何度目だろう。
ミューに魔物や機械人形と戦う力はない。
彼女を守れるのは従者である俺だけなのだ。
「アッシュはー、ミューがまもるー」
心配すぎて落ち着かない父親とは裏腹に、娘のほうはやる気満々だった。
「ミューはねー、決闘ごっこでいつもパパに勝ってるのー。ていやー」
彼女が無謀なマネをしないか、ちゃんと見ていないとな……。
プリシラが俺の手を取る。
「どうかご無事で。アッシュさま」
「ありがとう、プリシラ。行ってくる」
俺とミューは遺跡の中へ足を踏み入れた。
その瞬間、再び振動が起こり、入り口の扉が閉ざされた。
あっという間の出来事だった。
「とびらー、閉まったー」
無理だろうとは思いながら押したり叩いたりしてみたが、やはり扉はうんともすんとも言わなかった。
試練を乗り越えるか、あるいは半ばで果てるかしないと扉は再び開かないのだろう。
引き返すという選択肢を奪われたことよにり、緊張が生じる。
ミューは……相変わらずぼーっとした顔をしていた。
「ミュー。俺から離れるなよ」
「アッシュがミューの騎士さんー?」
「ああ。俺はミューを守る騎士だ」
「わーい」
ミューはのんきによろこぶ。
「でもー、ミューもつよいんだよー? いっしょに戦ってあげるねー?」
「い、いや、戦いは俺に任せてくれ……」




