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4-7

 それは魔物討伐の依頼だった。


 ――ガトリングタートルの撃破、及び甲羅の回収。

 ――アークトゥルス地方の海岸に出没。


「アークトゥルス地方。ここからちょっと遠いな」

「セヴリーヌはそこに住んでおるのじゃ。200年前と変わっておらねばな」

「あ、人の名前だったのですね」


 200年前ってことは、そのセヴリーヌって人もスセリと同じで不老の人間なのだろうか。


「セヴリーヌに会いにいくついでにこの依頼もこなすのじゃ」


 依頼の報酬はそこそこ高額だ。

 依頼の報告はアークトゥルス地方の冒険者ギルドでも可能と書かれてある。

 ガトリングタートルは、普段は動きが鈍重で温厚だが、敵とわかると甲羅からすさまじい勢いで弾丸を連射してくる、極めて危険な魔物だと説明がされていた。


「そのセヴリーヌって人に会えば、スセリの新たな身体の問題は解決するのか?」

「まあ、アヤツの機嫌次第じゃろうな」


 スセリの表情は浮かない。

 できればその人の力は借りたくなさそうだ。

 だが、人殺しなんてまっぴらな俺からすれば、そのセヴリーヌという人の力を借りればスセリの身体の問題が解決するのならば、ぜひともそうして欲しかった。


「まあ、これもなにかの縁なのじゃろう。悪友の顔を久しぶりに見にいくとするかの。やれやれ。200年も経っておれば、縁も腐りに腐っておろうな」


 そうして俺たちはスピカの街を出て、アークトゥルへ向けて出発した。



 今回の依頼で得た報酬をさっそく使い、俺とプリシラとスセリは乗合馬車で移動していた。

 馬車は農家の荷馬車を使いまわしたものらしい。昨夜の貴族たちが乗っていた馬車と比べればかなり貧相だ。馬もだいぶ年老いておりその歩みは遅い。

 俺たちは出荷される野菜の気分で荷台に乗っていた。


「ふわぁ」


 プリシラが大きな口を開けてあくびをする。

 俺と目が合うと、はっとなって慌てて口を手でふさぐ。


「もっ、申し訳ありませんっ」

「別にいいさ。俺も退屈だし」

「いえ、メイドにあるまじき行為でしたっ」

「プリシラはもうメイドじゃないだろ」

「心はメイドですっ」


 よ、よくわからんが、そうなのか……。

 スピカの街を出る前に本屋で買った小説を読んでいたのだが、馬車ががたがたと揺れるせいで読書に集中できず、俺は早々に本を閉じて青空を見上げていた。

 スセリは『オーレオール』の中に入っている。


「停車する村までまだまだ時間があるから、寝たらどうだ?」

「ふえっ。いいのですか?」

「いいさ。村についたら起こしてやるよ」


 プリシラはなぜか恥ずかしげにもじもじしている。


「そ、それでは遠慮なく……」


 するとプリシラは身体を横たえた――俺のひざを枕にして。

 プ、プリシラ!?


「てへへ……。気持ちいいですぅ、アッシュさま……」


 しあわせそうな顔をするプリシラ。

 た、確かに寝てもいいとは言ったが、膝枕をするとまでは言ってないぞ……。

 なんか誤解されてしまったようだ……。


 とはいえここで誤解を解いても彼女に恥をかかせるだけだ。

 それに、彼女が俺に甘えてくれてなんだか俺もうれしい。

 だから俺は彼女にひざを貸してやることにした。


「すぅ……。すぅ……」


 目を閉じたプリシラから寝息が聞こえてくる。

 車輪のきしむ音や石を乗り上げる音がする中、彼女のかわいらしい寝息が俺の耳に届いていた。


 プリシラのやわらかい髪がひざをくぐってこそばゆい。

 俺は真上からプリシラの寝顔を覗き込む。

 ……かわいいな。


 まるで妹ができたみたいだ。

 つん。


 彼女のほっぺたを指でつつく。

 やわらかい。


 つん、つん。

 いくらつついても起きない。

 俺はしばらく彼女の愛しい寝顔を堪能しつつ、ほっぺたを指でさわって楽しんだ。

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