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41-6

 気を利かせたつもりなのか、屋敷の主人は俺とミューを二人きりにした。

 俺たちは今、屋敷の庭を散歩している。


「おさかなー」


 ミューが魚の泳ぐ池を覗き込んでいる。


「おさかなー。かわいいー。おいしいー」


 自分よりひと回り年下の少女とどんな話をすればよいのかわからず、俺は彼女を持て余していた。

 結婚する気はさらさらないが、かといって彼女をないがしろにしていいわけではない。


 ミューもお見合いをしているつもりはないらしく、俺のことはあまり意識していないようす。召使い程度の認識のようだ。


「ミューは魚が好きなのか?」

「ケーキのほうが好きー」


 なんというか、独特な雰囲気の女の子だ……。


「アッシュはー、冒険者なのー?」

「お父さんから聞いたのか?」

「プリシラが言ってたー」


 拾った木の枝を振り回すミュー。


「てい、やー。アッシュは世界でいちばんの冒険者ー」


 プリシラ……。この子に俺のことをなんて説明したんだ……。

 ミューが木の枝の先っぽを俺に向ける。


「アッシュー。しょうぶー」


 ぺちぺちぺち。

 俺の身体を木の枝で打つミュー。


「そんなの振り回したら危ないぞ」


 俺にそう言われて、ミューは木の枝を放り捨てた。


「アッシュー。魔法みせてー」

「魔法か……」

「ケーキ出してー」

「ケーキは無理だな」

「ならクッキー出してー」

「お菓子の召喚はできないんだ」


 金属の召喚ならできるんだが。


「アッシュー。やくたたずー」


 さらっとひどいことを言われてしまった……。

 なんとか名誉挽回したい。

 俺は手に魔力を集中させ、召喚術を唱えた。


 頭の中に思い描いたもの――宝石のはまったペンダントが空中に出現し、手のひらの上に落ちた。

 金属召喚、成功だ。


「わー」


 ミューは目をまん丸にしてペンダントをみつめている。

 俺はペンダントをミューの首にかけた。


「くれるのー?」

「プリシラの友だちになってくれたお礼だ」

「ありがとーっ」


 ミューが笑う。

 彼女のあどけない笑みは、思わず自分も笑んでしまうような、胸をくすぐられるような、いとしげな笑みだった。


「ミュー、アッシュと結婚するー」

「えっ!?」

「きらきらのペンダントくれたー。ミュー、うれしいー」


 もしかして俺は墓穴を掘ってしまったのか!


「パパー。ミュー、アッシュと結婚するー」


 屋敷の中に戻るなり、ミューはすぐさま父親にそう報告した。


「そうかそうか! パパは嬉しいぞ!」

「アッシュがこれくれたー」

「おお! アッシュさま! ミューにこのようなすばらしいペンダントを用意していてくださったんですね!」

「い、いえ、用意したんじゃなくて召喚――」

「ぜひともミューと結婚して、我が家の後継ぎとなってください」

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