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40-7

「『ロッシュローブ教団』」


 スセリがそう口にする。


「ナイトホークはおそらく、ロッシュローブ教団の信徒なのじゃろう」

「ロッシュローブ教団ってなんだ?」

「名前のとおり、魔王ロッシュローブを崇拝する邪教の輩どもじゃ」


 俺の問いにスセリはそう答えた。

 邪悪な存在であるロッシュローブをあがめる連中がいるだなんて……。


 スセリによると、ロッシュローブ教団は裏の世界で暗躍しており、要人の殺害を請け負うのを生業とした暗殺教団の一面もあるのだという。


「ロッシュローブ教団は極めて危険な連中なのじゃ。おそらく魔剣アイオーンも、ただの偶像としてあがめるために使うだけではあるまい。事実、おぬしによるとナイトホークは精霊剣承をなそうと企んでおるようじゃからの」


 わきの下が汗ばむ。

 アイオーンがナイトホークの手に渡ったことの重大さがようやく理解できてきた。

 それにしてもくやしい。

 偶然あの場に居合わせたにもかかわらず、ナイトホークにみすみすアイオーンを渡してしまっただなんて。


「スセリ。俺たちはこれからどうすればいいんだ?」

「そうじゃのう」


 再び考え込むスセリ。

 しばしの沈黙の後、彼女は緊張感のない口調でこう言った。


「とりあえず――寝るのじゃ」


 大きなあくびを彼女はした。


「ね、寝てる場合なのか!?」

「アッシュは眠くないのか?」

「い、いや、それは眠いけど……」


 時刻はとうに日付をまたいだ。

 遺跡にいたときは緊張の連続で眠気は感じなかったが、帰るべき場所に帰ってきた今は眠い。


「生きていくうえで睡眠だけは欠かしてはならんのじゃ。これは年長者の貴重な教えなのじゃ」


 そういうわけで、魔剣アイオーンについての話はここで終わり、俺とスセリはプリシラの部屋を後にし、それぞれの部屋に戻った。

 自分の部屋に入り、ベッドにもぐると、どっと疲労が押し寄せてきてあっという間に眠った。



 そして翌朝。

 俺たちは朝食をとりながら、昨夜のできごとをマリアに話した。


「ナイトホーク……。そんな悪者がいるのですわね」

「スセリさま。わたしたちはこれからどうすればよいのですか?」

「うむ。それなのじゃが」


 いったんパンをかじってそしゃくし、飲み込んでからスセリは言う。


「この件はもはや、ワシらの手には負えんのじゃ」

「えっ!?」


 俺とプリシラとマリアはそろって声を上げた。

 驚く俺たちをよそに、スセリは再びパンを口にする。


「クラリッサの焼いたパンは美味なのじゃ」

「おい、スセリ。それってあきらめるってことか?」


 俺はてっきり、魔剣アイオーンを取り戻すための策を講じるのかと思っていた。

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