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40-6

「あやつに魔剣『アイオーン』を渡してしまったが、『オーレオール』が無事ならまあ、よかろうなのじゃ」

「すまない、スセリ」

「プリシラは無事なのじゃな?」

「ああ。気絶しているだけだ」

「ならばよし、なのじゃ」


 それにしても、スセリがどうしてここに。

 俺とプリシラの行き先は言わなかったはず。

 俺の表情から疑問を読み取ったらしく、スセリはこう言った。


「赤き月が昇る夜、アイオーンが覚醒するのじゃよ」

「スセリもアイオーンを知っていたのか」

「あたりまえなのじゃ。アイオーンは魔王ロッシュローブの剣なのじゃ」


 魔王ロッシュローブの剣……。

 ロッシュローブは古代人を滅ぼそうとした邪悪な存在。

 古代人はロッシュローブを倒したが、その代償として文明の大半を失った。


「ナイトホークはアイオーンを手にしてなにを企んでいるんだ?」

「それよりもまず、ケルタスに帰るのじゃ。プリシラをベッドに寝かせてやらんとな」


 治癒魔法でプリシラのケガを治した後、俺たちは遺跡を出てケルタスに帰った。

 『夏のクジラ亭』に戻り、プリシラを部屋のベッドに寝かせた。


「マリアはどうしたんだ?」

「セヴリーヌといっしょに赤き月を眺めに出かけておるのじゃ」


 宿のおかみのクラリッサさんが持ってきてくれた、濡れた手ぬぐいをプリシラの額に当てる。


「う……ん……」


 冷たさを感じたのか、プリシラが意識を取り戻した。

 薄く目を開け、顔を横に傾けて俺たちを見える。


「アッシュさま……。わたし……」

「もう大丈夫だ、プリシラ。ナイトホークはいなくなった」

「はうう……。申し訳ありません。役立たずのメイドで……」

「プリシラはよくやってくれただろ」

「やはりおやさしいですね。アッシュさまは」


 スセリがイスに座り、窓から赤き月を仰ぎ見る。


「アッシュよ。驚いたのはワシのほうじゃぞ。まさかおぬしらがアイオーンのもとにいるだなんて」

「プリシラといっしょに赤き月の花をさがしていたら、偶然遺跡を見つけたんだ」

「なるほどのう……。これも運命かのう」


 赤き月は夜の路地裏を不気味に赤く染めている。

 床にも窓枠で四角く切り取られた赤い光が落ちていた。


「人知れずアイオーンを破壊しようと思っておったが、ナイトホークに先を越されてしまうとは」

「ナイトホークはアイオーンを手に入れてどうするつもりなんだ?」


 魔王の剣。

 ただの強い魔力を持った武器ではなさそうだ。

 おそらく別の――それもとても恐ろしい物なのだろう。


「精霊剣承をするってあいつは言ってたが」

「あやつが精霊剣承についても知っておったとするとやはり……」


 あごに手を添えて考え込むスセリ。

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