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翌日、スピカの街に帰った俺とプリシラとスセリは、冒険者ギルドで今回の依頼の報酬を受け取った。
「お金がいっぱいですっ」
「マリアのおかげだな」
ガードマシン撃破および回収とマリア護衛で得られた報酬は、着の身着のままランフォード家を出ていった俺たちにとって大金だった。
これだけあれば、少なくともしばらくは宿代には困らない。
「さっそくごちそうを食べにいくのじゃ!」
俺から報酬の入った袋を奪い取るスセリ。
「ダメだ。節約節約」
即座に取り返す俺。
「節約節約、ですよっ、スセリさま」
「のじゃぁ……」
スセリはがっくりとうなだれた。
スセリに旅の資金は預けないほうがよさそうだ。
ところでマリアは今頃どうしているだろう。
まさか、また屋敷を抜け出して俺に会いにくるつもりじゃないだろうな……。
一抹の不安がよぎった。
あいつも冒険者になるとか言い出したらどうしようか……。
さすがに貴族の令嬢を、その日暮らしの冒険者にさせるわけにはいかないぞ。
「マリアが気がかりなのじゃな」
スセリが俺の心情を言い当てる。
「やっぱりスセリ、俺の心が読めるんだな」
「のじゃじゃっ。そんなわけなかろう。おぬしは思っていることがすぐ顔に表れるのじゃ」
「プリシラ、そうなのか?」
「あはは……。アッシュさまは正直なお方ですから」
自覚していなかった……。
なんだか恥ずかしい……。
「まあ、あの娘の性格じゃと、おとなしく両親に従いはせぬじゃろうな」
「同感だ」
「とはいえ、ワシらにはワシらのやるべきことがある。わかっておるな?」
「わかってるよ」
スセリの新たな肉体さがし。
それが魔書『オーレオール』を継承した俺に課せられた使命だった。
とはいえ、俺はこの使命に乗り気ではない。
スセリのために新たな肉体を見つけるということは、その肉体の元の持ち主の魂を肉体から追い払うということに等しい。
つまり、人殺しも同然。
スセリは通常の人間との倫理観が異なるのか、まったくに意に介していない。
俺は人殺しなんてゴメンだ。
スセリは死んだばかりの身体でも構わないと言っていたが、それもお断りだ。
「なあ、スセリ――」
「あーあー、わかっておる。わかっておるのじゃ」
スセリは面倒くさそうに頭をかいている。
「どうせワシの肉体さがしがイヤだとか言うのじゃろう? 昨夜も聞いたわい」
それからスセリは続けて言った。
「しかたないのう。それでは『セヴリーヌ』のところへ行くのじゃ」
「セヴリーヌ?」
それは地名か? それとも人の名前か?
聞きなれない言葉に俺とプリシラはそろって首をかしげる。
「本当ならアヤツの力は借りたくなかったのじゃが……。ほれっ」
スセリは掲示板に張られていた依頼書の一枚を引っぺがして俺に渡した。




