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40-1

 赤い花が乾いた台地に群生していた。


「これが……赤き月の花……」


 これが赤き月の花に違いない。

 花は茎まで赤く、そして赤色に発光していた。

 群れをなして咲くその花は不気味で、不安や恐怖を駆り立てた。


 赤き月の花以外にも目を引くものがもう一つあった。

 赤き花が群生する中に、四角い金属の板が地面に埋まっていた。

 人が4、5人乗れるほどの大きさをしている。


 俺たちは赤き月の花の花畑をおそるおそる進み、金属の板に近づいた。


「なんでしょう、この板は」


 プリシラが屈み、金属の板に触れる。

 赤き月の花は、この板を中心に群生している。

 ただの板ではないのかもしれない。


「えいっ」


 ぴょこんとプリシラが板の上に飛び乗った。

 その途端、いきなり地面が揺れ、それから金属の板がプリシラを乗せたまま地面に沈みだした。

 この板、昇降機なのか!?

 慌てて俺も板の上に飛び乗る。


 俺とプリシラを乗せた金属の板――おそらく古代人が作ったのであろう昇降機は地下へと下りていった。

 地下は真っ暗闇。

 昇降機が暗闇の中を下りる間、プリシラは俺にがっしりとしがみついていた。


 昇降機が止まる。

 壁に埋まった照明が点灯し、視界が明瞭になる。

 目の前には金属の扉。

 扉は俺たちを察知したのか自動的に開いた。

 俺とプリシラは昇降機を降りた。


「ここは……」

「古代人の遺跡ですね」


 石とは違う、古代人の遺跡でよく見る石灰――確かコンクリートという名前だったか。それで造られた地下通路が俺たちの前に続いていた。

 通路の壁には電気で光る照明が等間隔で設置されている。

 先ほどの昇降機といい、照明といい、遺跡の機能は生きているらしい。


「先へ進んでみるか」

「アッシュさま!?」

「俺たちがこの遺跡の第一発見者なら、珍しい遺物が残っているかもしれない」


 冒険者にとってこれは千載一遇。


「そ、そうですね。ちょっと怖いですけど、探索してみましょうっ」


 意を決し、俺とプリシラはコンクリートの通路を進んだ。

 二人の固い足音が通路に響く。

 プリシラは俺にぴったりと寄り添っている。


「ひえっ」


 通路を進んでいくと、機械人形と遭遇した。

 ……すでに壊れている。

 先ほど戦ったのと同型の、四足歩行の機械人形が通路に横たわっていた。

 身体は錆び、朽ちてからかなりの年月が経っているのがわかる。


「さっきの機械人形はここからやってきたのでしょうか」

「たぶん、そうだろうな」


 だとしたら、生きている機械人形がまだいるかもしれない。

 俺たちは注意深く前を見据えながらさらに先へと進んだ。

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