39-6
「隠れてください!」
プリシラに言われるまま、俺たちは大きな岩陰に身をひそめた。
緊張した面持ちのプリシラ。
「足音がします」
「魔物か?」
「いえ、この音は――」
ガシャン、ガシャン、ガシャン……。
遠くからその『足音』が聞こえてきた。
岩陰からそっと顔を出すと、音の下方向にそいつはいた。
機械人形だ。
古代人の遺跡で頻繁に目にする、動物を模した四足歩行の中型機械人形がうろついていた。
冒険者ギルドでは『汎用型』と呼ばれている。
機械人形がどうしてここに……。
こいつらが生息する遺跡はもっと離れた場所にあるはずだ。
いずれにせよ、赤き月の花をさがすにはこいつを倒さないといけない。
こいつが俺たちを認識すれば、即座に攻撃してくるだろうから。
「ここはわたしにおまかせください」
プリシラが最大まで伸ばしたロッドを手にする。
そして機械人形が後ろを向いた隙に、音もなく岩陰から出て、背後へと近づいた。
――が、しかし。
「はうっ」
石につまずいて盛大に転んでしまった。
機械人形が振り返る。
「プリシラ!」
俺は岩陰から飛び出し、プリシラのもとへ駆け寄った。
機械人形の目が赤く光る。
俺はプリシラを抱きかかえ、その場から飛び退く。
機械人形が口から光線を発射する。
光線はたった今まで俺たちがいた場所を撃ち、地面を爆発させた。
間一髪だった。
巻き上がった砂埃で視界が遮られたのに乗じ、俺はプリシラを抱きかかえたまま機械人形と距離を取った。
「だいじょうぶか、プリシラ」
「はうう……。すみません……」
自分の足で立とうとしたプリシラが「痛っ」と顔をしかめさせてよろめく。
足を痛めたらしい。
魔法で治療を――いや、その前に機械人形を倒さないと!
砂埃が晴れ、機械人形は俺たちの姿を再び認識する。
その目が赤く光る。
「貫け雷!」
その口から光線が発射される前に、俺が魔法で先制攻撃した。
かざした手から放たれた電撃が機械人形に直撃する。
機械人形は盛大に吹っ飛び、地面に落下した。
そして爆発し、木っ端みじんとなった。
機械人形が鉄くずと化したのを見届けると、俺はほっと息をついた。
「なんとかなったな」
「も、もうしわけありません……。わたしったらドジで……」
「誰にだって失敗はあるさ。それよりも、足を見せてくれ」
「い、いえ、わたしは平気です」
「平気なわけないだろ。ほら、魔法でケガを治すから」
プリシラはためらいながらもスカートを上げる。
メイド服の長いスカートがめくれ、膝まであらわになる。




