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39-1

 問題が解決したのを見届けた俺とスセリは屋敷を出て、それから近くの村の宿で一泊した。


「それにしても、半獣があんなに嫌われているなんてな」

「プリシラの境遇がめぐまれておるだけじゃ。半獣は今もなお、迫害の対象となっており、奴隷として売られておる」


 つまらなそうにあくびをするスセリ。

 真剣に考えたところで、どうにかなるものでもないな。

 半獣の境遇についていろいろと思いを巡らせようとしたが、それを中断して眠りにつこうとした。


 ……が、しかし。


「……なあ、スセリ。そろそろ寝ないか」

「うむ。そうするのじゃ」


 俺は「自分の部屋に帰ってくれ」と暗に言ったつもりだったのだが、スセリは俺の言葉を誤解して――いや、わかったうえであえてそうしたのだろう、俺のベッドにもぐり込んだ。

 端のほうに行き、一人分入れる隙間を空け、その部分をポンポンと叩く。

 ここで寝ろ、という意味だろう。


「ほれ、寝ないのか?」


 ベッドの前にたたずむ俺にそう言ってくる。


「ワシの添い寝では不満かの?」

「不満だ。自分の部屋で寝てくれ」


 俺に冷たく言われてスセリは「やれやれ」と素直にベッドから出た。


「アッシュをからかうのにも飽きたし、寝るのじゃ」

「おやすみ」

「おやすみ、なのじゃ」


 そういうわけで、俺とスセリはそれぞれ別の部屋で寝たのであった。



 翌日。

 プリシラを迎えに依頼主の屋敷へと赴いた。


「ランフォード家のアッシュだ。シェフの代理をしたメイドを迎えにきた」


 今度は家の名を告げて門番に取り次いだ。

 まもなくして俺とスセリは屋敷へと案内された。

 そして応接室で、屋敷の主と面会した。


「依頼を受けた冒険者がランフォード家のぼっちゃんだったとは驚きましたよ。狭い屋敷ですが、どうぞくつろいでください」

「お言葉に甘えさせていただきます」

「のじゃ」


 屋敷の主の態度は昨夜のプリシラに対するものとは正反対で、俺は内心呆れていた。


「プリシラの料理はどうでした?」

「とてもすばらしい料理を振舞ってくれましたよ。パーティーに招いた客人たちも大満足のようすでした。本当に助かりましたよ。さすがはランフォード家のメイドです」


 俺のご機嫌をとろうとしているのはロコツだったが、プリシラの料理が上出来だったのは本当だろう。

 応接室の扉が開く。


「パパー」


 昨日見た、屋敷の主人の娘――ミューが応接室に入ってきた。


「こらこら、ミュー。勝手に入ってくるなんてお行儀が悪いぞ」

「パパー。プリシラ、帰っちゃうんだってー」

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