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37-4

「では、今度はセヴリーヌさまのつくったボードゲームで遊びましょうっ」


 プリシラがそう提案する。


「わかった。すっごく楽しいゲームを考えておくからなっ」

「楽しみに待ってますね」


 セヴリーヌはごきげんになった。

 最初はどうなることかと思ったが、気が付けば俺たちとセヴリーヌのきずなが以前よりも強くなっていた。

 スセリはこうなるよう、はじめから画策してた……というのは深読みしすぎだろうな。

 とにもかくにも、今日はいい一日だった。

 俺にとっても、セヴリーヌにとっても。


 それから数日後、俺とプリシラ、スセリにマリアはセヴリーヌの家でボードゲームで遊んだ。

 仮想世界を構築する魔法はまだうまくいっていないらしく、代わりにセヴリーヌは紙にマスを描いた自作のボードゲームを用意していた。出来は拙かったが、俺たちはそれで楽しく遊んだ。


 セヴリーヌは大勢で遊ぶことの楽しさを知ったらしい。

 以前は俺だけを自分の家に連れ込んでいたが、最近はプリシラたちもいっしょに家に誘ってくるようになった。

 そしてみんなでボードゲームやカードゲームで遊んだり、浜辺に出て海で遊んだりもした。


「なあ、スセリ。セヴリーヌってどうして一人で街から離れた家で暮らしてたんだ?」


 夜。『夏のクジラ亭』の庭に俺とスセリは二人きりでいた。


「昔からずっとああだったのか?」

「いんや。昔はケルタスの市街地で暮らしておった。家族とな」

「家族……」

「なにを驚いておるんじゃ。あやつとて人の子。親がいるに決まっておるじゃろ」

「た、たしかに」


 想像する。セヴリーヌが両親と仲良く暮らしているのを。

 しかし、彼女は今、一人で暮らしている。

 当然だ。彼女は不老の身になって、100年以上経っている。両親はとうに亡くなっている。


「家族は不老にはならなかったのか?」

「やろうとしてもできなかったのじゃ。ワシとセヴリーヌは『稀代の魔術師』と呼ばれてはいるが、やはり不老の魔法は困難を極める。自分の身を不老にすることしかかなわなかったのじゃ」


 セヴリーヌはひとりぼっちに『なってしまった』わけだな……。

 子供の精神のまま、両親に先立たれた彼女の悲しみはどれほどだったのだろう。想像するだけで胸が痛くなる。

 両親だけではない。彼女にいたであろう友人たちも彼女を置いて歳をとり、死んでしまった。

 万物が流されてゆく時間の流れの只中に彼女は一人、立ち止まっている。


「あやつは知ってしまったのじゃ。親しい者との離別のつらさを」


 だからセヴリーヌは街から離れた海辺で一人、暮らしている。

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