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37-1

 それから俺たちはダイスの目に従うままボードゲームを進めていった。

 戦いは接戦。

 追い抜いたり追い抜かれたりを繰り返していた。

 ……たぶんそうなるよう、スセリがダイスの目を操作しているのだろうが。


 このゲームは完全にスセリの掌中にある。

 とはいえ、一着を狙うプリシラはダイスを投げるたびに一喜一憂しており、セヴリーヌもすっかりゲームにのめり込んでいた。

 マリアは冷静だった。

 彼女もこのゲームがスセリに操作されている茶番だとわかっているのだろう。


 そしていよいよゴール目前。

 『偶然』にも俺たち全員、同じマスに止まっていた。

 さて、スセリは誰を一着でゴールさせるつもりなのだろう。

 まさか本当に自分が一着になるつもりじゃ……。

 だとすれば興ざめもいいところだが、じゅうぶんにありえる。


「さあ、これで6の目を出した者が一着じゃぞ」


 6を出せばぴったりゴールマスにたどり着ける。

 最初にダイスを振るのはスセリ。


「ほいっ」


 スセリはダイスを放り投げる。

 弧を描いて空中を舞うダイス。

 皆、固唾をのむ。


 ゴトンッ。

 ダイスが地面に落ちる。

 出た目は――5。


 プリシラはほっと胸をなでおろしたが、そのあと慌てて「ざっ、残念でしたねスセリさまっ」と取り繕った。

 5マス進み、止まったマスを見下ろすスセリ。


「おやおや。これはこれは」

「なんて書いてあるのですか?」

「『振り出しに戻る』じゃな」

「えっ!?」


 その瞬間、スセリの姿が消えた。

 振り返ると、はるか遠くにあるスタート地点に彼女の姿がぽつんとあった。

 空中にスセリの姿が半透明に映し出される。


「いやー、まさかここまで来て振り出しに戻るとはのう」


 スセリはこれっぽっちも残念そうではなかった。

 スセリは勝つつもりがないのか……?

 っていうか、ゴール目前にこんなひどいマスを用意しているなんて、さすがはスセリだ……。


「次はアタシたちの番だぞ、マリア」

「がんばってくださいまし、セヴリーヌさま」

「でりゃーっ!」


 セヴリーヌは全力でダイスを放り投げた。

 回転しながら上空に投げ放たれるダイス。

 そして地面に落下する。


「出た目は……」

「4だ!」


 4マス進むマリアとセヴリーヌ。


「くそう……。あと2マスなのに」

「わたくし、てっきり5が出るかと思いましたわ」


 俺もだ。

 さすがにそこまでスセリも意地悪ではなかったようだ。


「次はわたしたちの番ですよ、アッシュさまっ」


 足元に出現したダイスを拾うプリシラ。


「必ず6を出してみせます。メイドの威信にかけて」


 さて、スセリはこれからどうするつもりなのだろう。

 彼女自身は一位争いから降りたようだが。


「てえーいっ」


 プリシラがダイスを投げた。

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