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36-5

 まずは俺とプリシラの番。

 プリシラは真剣な面持ちでダイスを抱えている。


「てえーいっ」


 そして気合を入れてダイスを放り投げた。

 ポーンッ。

 ゴトンッ。

 出た目は6。


「やりましたっ」


 プリシラが目を輝かせる。


「アッシュさま! わたし、6を出せましたっ」

「やったな、プリシラ」


 俺がプリシラの頭をなでると、彼女は「てへへー」と顔をとろけさせた。

 彼女にしっぽがあったら、ぶんぶん振り回していることだろう。


「さあ、6マス進むのじゃ」


 俺たちは振り出しのマスから6マス進む。

 1、2、3、4、5――6。

 6マス目で俺とプリシラは立ち止まる。

 振り返ると、スセリやマリア、セヴリーヌの姿は遠く、小さくなっていた。


「なにか書いてありますね」


 足元に目をやると、マスに文字が書かれていた。


 ――犬の真似をする。そうしたら4マス進む。


「え、なんだこれ……」

「書いてあるとおり、犬の真似をすれば4マス追加で進めるのじゃ」

「わっ。スセリさま!」


 空中にスセリの姿が半透明に映っていた。

 反対側にはマリアとセヴリーヌの姿も映っている。

 なるほど。これなら遠くのマスにいても他の人のようすがわかる。なかなか凝ったつくりをしているな、スセリのボードゲーム。


「さあ、犬の真似をするのじゃ」

「しない」


 俺はばっさりそう言った。

 そんな恥ずかしい真似をするくらいなら、4マス進まなくてもいい。

 ――と思っていたが、


「アッシュさまっ。わたし、犬の真似をします!」


 プリシラの背後に闘志の炎が燃え盛っていた。

 すごい意気だ……。


「わんわんっ。わんわんわーんっ」


 プリシラは両手を胸のあたりまで上げて犬の前足みたいにしながら、鳴き声を真似した。

 か、かわいい……。

 犬に似ているかはともかくとして、かわいい。


「まあ、いいじゃろ。4マス追加で進むのじゃ」


 プリシラのがんばりのおかげで俺たちは4マスさらに進めた。

 合計10マス。

 出だしは好調。


「次はアタシたちの番だな」


 俺たちの前からダイスが消え失せ、セヴリーヌの足元に出現した。

 セヴリーヌがダイスを抱え、放り投げる。

 出た目は――1。


「残念じゃったのう。のじゃじゃじゃっ」

「ぐぬぬぬ……」


 くやしいあまり全身を震わせているセヴリーヌ。

 それをあざ笑うスセリ。


「仕方ありませんわ。1マス進みましょう、セヴリーヌさま」


 セヴリーヌとマリアは1マスだけ進む。


「マスに文字が書いてありますわね」

「えーっと……『1マス戻る』!? ふざけるなッ!」


 む、無慈悲すぎる……。

 なんというか、スセリの意地の悪い性格がよく表れているゲームだ。

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