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36-4

 スセリの身体が光に包まれる。

 それから彼女の姿が突如、こつ然と消え失せた。


「スセリさまが消えちゃいま――」


 続けてプリシラも言葉の途中で消えてしまう。

 どこかに転移されたのか!?

 残りの俺とマリア、セヴリーヌもまもなくしてどこかへと転移された。



 目の前の光景が一瞬にして変わった。


「ここは一体……」

「ワシの世界にようこそ、なのじゃ」


 俺たちが転移されたのはふしぎな世界だった。

 見渡す限り広がる野原。

 野原には等間隔に正方形の板が並べられている。

 俺たちが立っている場所も、正方形の板の上だ。

 板には『振り出し』という文字が書かれている。


「これは、ダイスですの?」


 足元には両腕で抱えて持たなければならないほどの大きなダイスが転がっていた。

 これはもしかして……。


「ここはワシが作ったボードゲームの世界なのじゃ」


 やはりそうだった。

 等間隔に並べられている四角い板は、ボードゲームのマスだった。

 決戦の舞台はボードゲーム――って、そのままの意味だったのか……。


「もしかして、わたくしたち自身がコマになってマスを進みますの?」

「いかにも。どうじゃ、楽しそうじゃろう?」

「楽しそうですっ」

「愉快ですわねっ」


 プリシラとマリアは意外と面白がっていた。

 まあ、魔法で戦うよりはマシと考えるべきだろう……。


「なあ、スセリ。俺たちもゲームに参加するのか? 確かお前とセヴリーヌの決闘だったはずじゃ」

「そのほうが楽しいじゃろう。セヴリーヌもそれでよいな?」

「ま、まあ、いいぞ……」


 セヴリーヌは複雑な表情をしながらスセリの挑戦を受け入れた。

 憎き恋敵の提案だから、てっきり断固として受け入れないと思っていたが、そうでもないらしい。

 それに彼女、さっきから落ち着かないようす。

 巨大なボードゲームで遊べることになって、わくわくしている……?


「ゲームは二人一組で進めるのじゃ。アッシュとプリシラの組。マリアとセヴリーヌの組。そしてワシは一人なのじゃ」

「アッシュさま、がんばりましょうねっ」


 はりきっているプリシラ。


「セヴリーヌさま、よろしくお願いしますわ」


 マリアがセヴリーヌにおじぎする。


「ダイスを振るのはアタシだからな」


 そういうわけで、俺たちはスセリの用意したボードゲームの世界で遊ぶことになった。

 それにしても、さすが『稀代の魔術師』。たわむれでこんな世界を用意できるなんて。


「最初にゴールした組がアッシュを好き勝手にできる権利を得られるのじゃ」


 それって、俺になんの利もないような……。


「が、がんばらないと……。ぜったいに一番にゴールしますっ」


 プリシラがこぶしを固く握っていた。

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