36-3
セヴリーヌの家に到着する。
セヴリーヌは俺たちに背を向け、夕日に燃える海を眺めていた。
くるり。
振り向くセヴリーヌ。
その目は闘志を宿していた。
「長きにわたるいんねんにしゅうしゅ――しゅうしふをうつときがきたな、スセリ!」
「強がって難しい言葉を使わんでよい。かえってアホに見えるぞ」
「こいつーっ!」
戦う前からスセリの挑発に乗っている……。
二人の決闘、どちらが勝つか早くもわかってしまった。
「泣いても許してやんないからなっ」
「泣きべそをかくのはおぬしのほうなのじゃ。セヴリーヌよ」
「ぎったんぎったんにしてやる!」
夕日を背に、セヴリーヌが片手を高らかに上げる。
その手に魔力が集中する。
魔力は可視化するほど青く凝縮され、そして光の球体となった。
「一撃でふっとばしてやる! くらえー!」
「待つのじゃ」
セヴリーヌの手から放たれる光の球体。
スセリへとめがけて飛んでいったそれは、スセリが軽く手を払うだけで跳ね返された。
反射された光の球体は海へと飛んでいき、はるか遠くの海面に落ち、爆発して極太の水柱を噴出させた。
さすがは『稀代の魔術師』。軽々といなしてみせたな。
セヴリーヌはくやしげに歯を食いしばっている。
再び攻撃しようと手を掲げる。
しかしそれをスセリが「待てと言っておるのじゃ」と制した。
「ワシは魔法で決着をつけるとは一言も言っておらんぞ」
「なに?」
「まずはおぬしの家に上がらせてもらうのじゃ」
そう言ってスセリはセヴリーヌの家に入ってしまった。
「お、おい! 待てっ」
慌てて後を追うセヴリーヌ。
俺たちも二人を追ってセヴリーヌの家に上がった。
「はうっ……」
彼女の家に入るや、その悲惨な散らかりようにプリシラが苦しげな声を出した。
「泥棒にでも入られたみたいですわね……」
マリアも顔をしかめている。
俺はこの家に何度も足を運んでいるから、とっくに慣れてしまっていた。
「全員そろったようじゃの」
スセリはテーブルに着いていた。
対面にはセヴリーヌが座っていて、スセリをにらみつけている。
「おい、決闘はどうするんだよ」
「もちろんするのじゃ。じゃが、ワシの決めた方法での決闘じゃがな――来たれ!」
スセリが魔法を唱える。
すると、テーブルの上に魔法円が描かれ、そこから正方形の板が出現した。
続けて、いくつかの駒とダイスが降ってくる。
「ボードゲームですか?」
テーブルを覗き込んだプリシラがそう言った。
スセリはボードゲーム一式を召喚したのであった。
「決闘の舞台はこのボードゲームなのじゃ」




