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35-7

 それ以降、魔物や野盗に出会うことなく俺たちは目的地の村へとたどり着いた。


「本当にありがとうね。冒険者さん」

「ありがとうございます」


 依頼主の老人の夫婦がそろって俺たちに礼を言ってくれた。


「大したものは出せんが、ウチで昼食を食べていかんかね」

「ぜひそうさせていただきますわ。ねっ? アッシュ」

「そうだな。それではごちそうになります」


 そうして俺とマリアは老夫婦の家で昼食をとった。

 出されたのは、焼きたてのパンとカボチャのスープ。

 質素だが、心がほっとするような味わいで、とてもおいしかった。


「孫たちが帰ってきたみたいでうれしいねえ」

「そうじゃの」


 老夫婦の息子と孫は別の街で暮らしているのだという。

 この村に帰ってくるのは年に数える程度で、孫の成長を毎回楽しみにしているのだと二人は言った。

 孫は今、15歳で、俺たちと年齢が近かった。


「さっ、どんどん食べてちょうだい」


 おばあさんが編みカゴからパンを出して俺の皿に載せた。

 実は既に腹はふくれていたのだが、断りきれず「ありがとうございます」とそれを口に運んだ。

 するとおばさんはそれをよろこんでくれたらしく、カボチャのスープまで足してきたのであった。


「どうじゃ。ばあさんの料理はうまいじゃろ」

「はい。とても」

「遠慮せずいっぱい食べてちょうだいね」


 しかし、もうおなかいっぱいで食べられない……。

 俺は苦笑いするしかなかった。


「アッシュ。口のまわりが汚れていましてよ」


 マリアが俺の口元をハンカチで拭う。


「おいおい、子供じゃないんだぞ」

「わたくしから見れば、アッシュなんてまだまだ子供ですわ」


 そうお姉さんぶられてしまった。

 老夫婦が顔を見合わせて笑う。


「仲がいいのう。ワシらの若いころを思い出すわい」

「あなたたち、ずっと仲良しでいなさいね」

「もちろんですわ。ねっ? アッシュ」


 マリアが俺にウィンクした。


「でもあなたたち。長い年月を共にしていると、仲違いをすることだってあるわ。そういうときのために、ちゃんと仲直りする方法を二人で考えておくのよ。それが仲良しの秘訣」


 おばあさんがそう言った。


「おばあさんたちが仲違いしたときは、どうやって仲直りしていますの?」


 マリアがそう質問する。

 するとおばあさんはニコニコしながらこう答えた。


「とびっきりのごちそうを用意するの。おじいさんの大好きなシチューをね」

「まあっ」


 マリアが声を弾ませる。


「二人でおいしいごはんを食べれば、あっという間に仲直りよ」

「ステキですわっ」


 マリアは目をきらきらと輝かせていた。

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