34-1
二人で空を眺めながら、ゆったりとした時間を過ごす。
言葉数は少ない。
しかし、それが俺たちの絆の証であった。
「あれっ? あれはなんでしょう?」
そんなときであった。プリシラが空を指さしたのは。
空を鳥が飛んでいた。
異様に大きな鳥だ。ワシやタカよりふたまわりは大きい。
しかも低空を不安定な動きで飛行している。
飛行というよりは、滑空に近い。
「落っこちてきます!」
巨大な鳥がみるみる地上に近づいてくる。
そしてついに公園のど真ん中に墜落した。
公園に立っていた石像に突っ込んで、粉砕しながら落下する。
周囲にいた人々が悲鳴を上げながら逃げ出していく。
「アッシュさま。あの鳥、魔物です!」
墜落しながらも、その鳥は死んでおらず、起き上がった。
タカに似た鳥型の魔物。
動物ではなく魔物とわかったのは、蛇のような長いしっぽが生えていたからだ。
しっぽは自我を持っているかのように左右に動いている。
鳥型の魔物が甲高い鳴き声を上げる。
すると、大きく開いた口から細い光線が発射された。
光線は直線上の芝生をなぎ払いながら、空高くに伸びていった。
まずい。
あんな攻撃をまたされたら、街の人々に被害が及ぶ。
俺は剣を召喚する。
俺は『オーレオール』を持ってきていないし、プリシラも当然、ロッドは『夏のクジラ亭』に置いてある。まともに戦えるのは俺だけだ。
鳥型の魔物に接近する。
魔物は今、俺たちに背を向けている。
攻撃を叩きこむなら今が好機。
――と思いきや、蛇のようなしっぽが俺の接近を察知し、ムチのようにしなって迎撃してきた。
不意打ちを食らい、剣を落としてしまう。
鳥型の魔物がこちらを向く。
クチバシを開く。
俺はとっさに地面を転がり、横に回避する。
次の瞬間、鳥型の魔物の口から光線が発射された。
光線は俺の肩すれすれを通り、背後にあった芸術作品のオブジェを破壊した。
俺は落としていた剣を拾い、思いっきり振りかぶって鳥型の魔物に叩きつけた。
剣は魔物の首の部分に直撃する。
刃が深く食い込む。
魔物は短い断末魔を上げ、口から赤い血を吐いた。
そして横倒しになり、絶命した。
その後、冒険者ギルドの職員が公園に駆けつけてきた。
俺が魔物を倒したことを告げると、駆けてつけてきた職員の一人、オーギュストさんが俺たちに礼を述べた。
「街の人々を守ってくれてありがとう。アッシュくん」
「俺はやるべきことを果たしたまでです」
それから鳥型の魔物は冒険者ギルドの職員たちによって回収され、俺とプリシラはギルドまで行って魔物討伐の報酬を受け取った。




