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33-6

 そんな感じでセヴリーヌと遊ぶ日々が続いた。

 相変わらず二人きりで。

 冒険者としての仕事があって遊べない日は、彼女はロコツに不機嫌になって俺を困らせた。

 裏を返せば、それほど俺のことを好いてくれているというわけなので、悪い気はしなかったが。


「アッシュってば、すっかりセヴリーヌさまのお気に入りですわね」


 マリアがちゃかしてくる。


「マリアよ。アッシュをセヴリーヌに取られても知らんぞ」

「ご心配ありがとうございます、スセリさま。ですけど、わたくし、ちびっ子にやきもちをやくほど幼稚ではありませんの」


 そして俺に目配せしてくる。


「アッシュとわたくしは将来結ばれる運命。いくらでも貸して差し上げますわ」


 そんな運命、俺は知らないぞ……。

 マリアは完全に俺と夫婦になるつもりでいるらしい。

 スセリが「のじゃじゃじゃっ」といつもの変な笑い声を上げる。


「油断してはならんぞ。セヴリーヌはおぬしが思っている以上に突拍子もない人間なのじゃからな」

「あら、それは愉快ですこと」


 マリアは不敵な笑みを見せた。


「アッシュはいるかー!」


 ウワサをすれば。

 今日もセヴリーヌが俺を迎えに『夏のクジラ亭』へとやってきた。

 廊下を駆ける足音が近づいてくる。


「アッシュ!」


 そして彼女が食堂に現れた。


「ごきげんよう。セヴリーヌさま」

「毎日飽きずによく来るのう」

「アッシュ。いっしょに遊ぶぞ」


 俺以外は眼中にないらしい。セヴリーヌはマリアとスセリを無視して俺に話しかける。


「悪いなセヴリーヌ。今日は先約があるんだ」

「えっ!?」


 きょとんとするセヴリーヌ。

 まるで初耳であるかのような反応だ。


「そんな話、聞いてないぞ!」

「いや、昨日したぞ……」

「いいからアタシと遊べ!」


 子供みたいに駄々をこねる。

 みたい、というか、実際子供なのだが。

 セヴリーヌは俺の腕を執拗に引っ張ってくる。

 参ったな……。


「アッシュさま、お待たせしましたっ」


 そのときだった、俺たちの前にプリシラが現れたのは。

 プリシラは以前買ったワンピースを着ていた。


「……ハッ! セ、セヴリーヌさま……!」


 プリシラの顔が緊張でこわばる。

 機嫌を損ねたようすのセヴリーヌを目にして危機を察したらしい。


「お前か! アタシからアッシュを横取りしようとするヤツは!」

「は、はう……」


 うろたえるプリシラであったが、彼女にしては珍しく反撃に出た。


「きょっ、今日はわたしがアッシュさまとお出かけする約束をしていたのです。セヴリーヌさまといえど、これだけは譲れませんっ」

「アタシは今日、アッシュと遊びたいんだ!」

「また今度にしてくださいっ」


 最近ずっと俺をセヴリーヌに取られていたからだろうか、今日のプリシラは強気だった。

 にらみ合う二人。

 ふ、二人の間に火花が散っている……。


 テーブルに頬杖をついていたスセリが他人事みたいにこう言う。


「三人で出かければいいじゃろ」

「ダメですっ」

「ダメだ!」

「のじゃっ!?」


 二人同時に叫ばれ、スセリはイスから転げ落ちた。

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