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33-4

 そもそもどうやってセヴリーヌは俺の部屋に……。

 部屋にはカギをかけたはず。

 ……いや、この魔術師にとって開錠の魔法くらい造作もないな。


「とりあえずセヴリーヌ。そこをどいてくれ」


 俺に言われると、セヴリーヌは俺からぴょんと飛び降りた。


「さっさとアタシの家にいくぞ」

「その前に朝食を食べさせてくれ。セヴリーヌはもう食べたのか?」

「まだだぞ」

「なら、みんなで食べよう」


 俺とセヴリーヌは食堂に足を運んだ。

 食堂にはすでにプリシラがいた。

 今日は普段のメイド服を着ていた。


「おはようございます、アッシュさま。あっ、セヴリーヌさまも!」


 それからマリア、スセリと集まってきた。


「おぬしが来るとは珍しいの」

「来ちゃ悪いか」

「悪いとは言っておらんのじゃ。よくこんな朝早くに起きれたの」

「アッシュを迎えにきたんだ。朝食はそのついでだぞ」

「ほう」


 意味深な目つきで俺を見てくるスセリ。


「まさかセヴリーヌまで手なずけるとはの。やりおるのう」


 手なずけたわけじゃないんだがな……。

 まさかこんな朝早くに迎えにきてくれるほど楽しみにしていただなんて思いもよらなかった。


 ヴィットリオさん運んできた朝食をみんなで食べる。

 今日の朝食はトマトソース和えの鶏肉が入ったサンドイッチだ。


「そういえばセヴリーヌ。さっきは助かった」

「助かった? 寝坊した件か?」


 俺は夢の世界に現れた精霊竜の話をセヴリーヌに聞かせた。

 ツノの生えた少女と戦いになる寸前で、セヴリーヌが俺を夢から覚まさせたのだ。


「なあ、セヴリーヌ。俺に教えてくれないか。精霊竜について」

「うーん」


 セヴリーヌが口元にトマトソースをつけたまま悩んでいる。


「セヴリーヌよ。今はまだ早い。物事には時期というものがあるのじゃ」


 スセリがそう言うと、セヴリーヌはむっと顔をしかめた。


「スセリに指図されるのはシャクにさわるから教えてやるぞ、アッシュ」


 しまった、とスセリが頭に手をやった。

 セヴリーヌはこういうあまのじゃくな少女なのだ。


「精霊竜は精霊界の守護者なんだ。精霊界は、精霊たちが住む異世界だ」

「精霊竜は、どうして俺の夢に現れて俺に精霊剣を抜かせようとしたんだ?」

「それはお前に精霊剣承をさせるためだぞ」

「精霊剣承って?」

「精霊剣を抜くことだぞ」

「抜いたらどうなるんだ?」

「知らん」


 なっ!?

 俺は持っていたサンドイッチをぽろりと落としてしまった。


「アタシも精霊剣承を実際に見たことはないからな」


 セヴリーヌはサンドイッチを食らいながら言った。


「迫りくる災厄の日がどうのこうの、前にスセリが言ってなかったか?」

「ならスセリに聞けよ。アタシはそのへんはよくわからん」


 セヴリーヌも詳しく知らなかったとは……。

 スセリはほっとしたようすだった。

 きっとスセリに尋ねても答えてはくれないだろうな……。


「そんなことよりもアッシュ。今日もボードゲームで遊ぶぞっ」


 セヴリーヌは屈託のない笑顔を俺に見せてくれた。

 彼女にとって大事なのは、あくまでもそれらしかった。

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