33-3
その夜、俺はまた夢の中で精霊竜と会った。
前回とその前の間隔が長かったから、こんな短い間隔で再び会うことになるだなんて意外だった。
「あなたに話しておくべきことがあります」
精霊竜のかたわらには、やはりツノの少女もいる。
相変わらず俺を敵視している。
俺は身に覚えはないのだが、あちらはそうする理由があるのだろう。
「『稀代の魔術師』に心を許してはなりません」
「スセリにか?」
「そのとおりです。かの魔術師は万物に課せられし『時間』という定めから逃れた邪悪なる者」
邪悪なる者とはまた大仰な。
まあ、善なる者でもないのは確かだろうが。
しかし、俺は精霊竜に対し首を横に振った。
「スセリは俺の先祖で、そして仲間だ。その忠告には従えない」
「あなたはあの魔術師にほだされているのです」
精霊竜は善意で俺に訴えてきている。
ツノの少女はともかく、この竜はやさしい竜なのが言葉から伝わってくる。
「折ってしまったとはいえ、あなたは精霊剣に触れられる人間。あなたまで邪悪な側面に落ちてしまってはいけません」
「説得なんて無意味です。やはりこいつはここで始末するべきなんです!」
大剣を抱えてツノの少女が一歩、前に出る。
「こいつの意識を夢の中で殺せば、二度と目覚めなくなるでしょう。そうすれば聖域にある本物の精霊剣も破壊されずに済みます」
「手荒な真似はよしなさい」
「あなたは優しすぎるのです」
ツノの少女が大剣を水平に構える。
俺も剣を召喚し、両手で握る。
「お前をこちら側につかせようとこのお方は考えているが、それも無意味だと分かった。ならばここで死んでもらう!」
戦いは避けられそうもない……。
細身でありながら分厚い大剣を軽々と扱う少女。戦いとなれば無傷では済まない。
柄を握る手が汗ばむ。
そのときだった。
――おきろーっ!
白い世界にそんな大声が響き渡ったのは。
「ぐはっ」
俺は腹部に衝撃を受けて、夢の世界から叩き出された。
むりやり目覚めさせられる。
ベッドにあおむけに眠っている俺に、桃色の髪の少女が馬乗りになっていた。
「セ、セヴリーヌ……?」
「いつまで寝てんだお前!」
セヴリーヌがぷくっと頬を膨らませている。
顔を傾けて時計に目をやる。
朝食どころか顔を洗うにも早い時刻。文句を言われるような時間ではない。
「ったく、だらしない奴だな。アタシの家に遊びに来るって約束したの忘れたのか?」
「い、いや、忘れてないが……」
「なら、なんでぐーすか寝てるんだ。あんまり遅いから迎えにきてやったんだぞ」
『遅い』って、まだ朝になったばかりだぞ……。




