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32-7

「セヴリーヌ……。それ、楽しいのか……?」


 おそるおそる尋ねる。


「まあまあだな」


 セヴリーヌは平然とそう返事をした。

 一人でボードゲームなんて悲しすぎるぞ!

 いたたまれなくなった俺はセヴリーヌにこう言った。


「なあ、俺といっしょにボードゲームしないか?」

「お前とか?」


 うーん、と考え込むセヴリーヌ。

 悩むのか……。


「いいぞ。混ぜてやる」

「あ、ありがとう……」


 そういうわけで俺とセヴリーヌは二人でボードゲームで遊ぶことになった。

 俺は青のコマで、セウヴリーヌは赤のコマ。

 二つのコマをスタートのマスに置く。


「お前、ボードゲームのルールは知ってるか?」

「ダイスを振って出た数字だけマスを進めて、先にゴールに着いたほうの勝ちだろ?」

「そうだ。最初はアタシからだぞ」


 セヴリーヌがダイスを振る。

 出た数字は――6。


「やったっ。幸先いいぞ」


 セヴリーヌが赤のコマを6マス進める。

 次は俺の番だ。

 ダイスを振って出た数字は――1。


「あははっ。ついてないなお前っ」


 セヴリーヌが爆笑する。

 楽しんでくれているようでなによりだ。


 セヴリーヌとのボードゲームは楽しく続いた――と思いきや、彼女相手にそうはいかなかった。

 彼女の運がよかったのは最初だけで、それ以降、いくらダイスを振っても出る目は2やら3やらばかりだった。

 しかも、『6マス戻る』やら『1回休み』やらのマスにやたらと止まっていた。

 そんなわけで、セヴリーヌの機嫌はどんどん悪くなっていった。


 それとは逆に、俺は妙に運に恵まれており、5マス、6マスとコマを進めて、『6マス進む』『もう一度ダイスを振る』といったマスにばかり止まって、セヴリーヌを追い抜いてしまった。

 歯ぎしりしながら俺をにらみつけてくるセヴリーヌ。

 胃がキリキリと痛む……。


 こ、このゲームに限っては、俺が勝ってはまずい……。

 なんとかしてセヴリーヌを楽しませないと。

 こうなったら最後の手段だ。

 俺はダイスを振るのと同時に、密かに魔法を唱えた。


 ――ダイスよ、1を出せ。


 即席の自己流魔法は成功し、ダイスは1の数字を出した。

 しかも、進んだ先のマスは『1回休み』だ。


「はははははっ。ざまーないなっ」


 セヴリーヌが俺を指さして笑った。

 俺はほっと息をつく。


 次はセヴリーヌの番だ。

 彼女がダイスを転がしたのを見計らい、俺は再び魔法を唱えた。


 ――ダイスよ、6を出せ。


「よしっ。6だ!」


 セヴリーヌは自分のコマを6マス進めた。


 それから俺は彼女にバレないよう、微量の魔力を使ってダイスを操作してゲームを進めた。

 俺はなるべく小さい数字を出すようにし、彼女は大きい数字を出すようにする。

 そうしていくうちに、やがて順位は逆転し、セヴリーヌが先にゴールにたどり着いた。

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