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32-4

 食事をとりながら俺は、さっきまで見ていた夢の話をスセリにした。

 以前と同じ、白い世界にいる、体毛を生やした精霊竜と、ツノ生えた少女。

 そして現れた精霊剣。


「ほう、精霊剣がアッシュの前に現れたのじゃな」


 スプーンを動かしてたスセリの手が、俺が『精霊剣』と口にしたところで止まった。

 彼女の顔が真剣になる。


「して、おぬしは精霊剣を引き抜けたのか?」

「折れた」


 そう答えると、俺を見つめていた目が大きく開かれた。


「折れたとな!?」


 そして声を裏返らせた。

 スセリは目をまんまるに見開いたまま、まじまじと俺の顔を見る。

 俺は気まずくなって目をそらす。

 それからスセリはいきなり大笑いした。


「のじゃじゃじゃじゃっ」

「ど、どうしたのです? スセリさま!?」


 話を聞いていたプリシラとマリアは困惑していた。

 むろん、俺もだ。

 今のにスセリを笑わせる要素があったのか……?

 散々笑ったあと、スセリは目の端に浮かんでいた涙をぬぐった。


「アッシュよ。おぬしはまことに面白いのじゃ」

「あのな。俺は真面目に話してるんだぞ」

「ワシだって真面目なのじゃ」


 しかし、とスセリは続ける。


「精霊剣を抜いたわけでも、抜けなかったわけでもなく、折ってしまうとはな。実に愉快じゃ。いや、この『稀代の魔術師』の後継者じゃ。これくらはやってもらわんとな」

「いい加減教えてくれ。あの精霊竜とツノの生えた女の子、それと精霊剣について。精霊剣承ってなんなんだ?」

「そう急くでない」


 コップを傾けてミルクを飲むスセリ。


「ワシらと奴らは同じ目的地へと続く運命線上を歩んでおるのじゃ。いずれわかるときがくる」


 結局今回も変な言い回しではぐらかされてしまった。


「まあ、一つだけ言えることがあるとすれば」

「すれば?」

「精霊竜とその従者はワシらの敵じゃ」


 敵!?

 意外な言葉だった。

 ツノの少女はともかく、あのやさしそうな精霊竜が俺たちの敵とは到底思えなかった。


「精霊竜がおぬしになにを語るかは知らんが、奴らの言葉を信用してはならんのじゃ」

「どうしてだ」

「言ったじゃろう。敵だからなのじゃ」

「だから、どうして精霊竜たちが俺たちの敵なんだ?」

「それもいずれわかるのじゃ」


 らちが明かない。

 スセリはすべてを知っているが、俺に説明する気はないらしい。少なくとも、今は。

 もどかしいが、俺は諦めて皿の上のサンドイッチにありつくことにした。


「アッシュさまは伝説の勇者なのですか? スセリさま」

「まあ、似たようなもんじゃろう」

「すごいです! アッシュさま!」


 勇者と言われても、これっぽっちも実感がわかなかった。

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