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31-5

 数日前、俺とスセリとフーガさんはガルディア家を訪れていた。


「心ばかりのお礼ですが、これを受け取ってください」


 ディアが白銀のネックレスを俺にくれた。

 それを見たスセリが「ほう」と興味を示す。


「このネックレス、魔力が宿っておるのじゃ」

「それってつまり、魔法道具なのか?」

「これはガルディア家に伝わる家宝の一つです。どのような力を宿しているかはわかりませんが……」


 魔法道具の白銀のネックレス。

 これにはどのような力が秘められているのだろうか。


「スセリさんやフーガさんならどのような力を宿しているかわかるかと思ったのですが」


 ネックレスを手にしたフーガさんであったが、困った表情をしている。


「すみません。僕には魔力が宿っていることしかわかりません。研究所に戻って詳しく調べればわかるかもしれませんが」

「わしもさっぱりわからんのじゃ」

「そうでしたか……」


 こればかりはネックレスの制作者にしかわからないようだ。


「アッシュさん。そのネックレス、着けてみてくれませんか?」

「ん? わかった」


 ディアに言われるまま、俺はネックレスを首から下げる。


「似合ってるか?」

「はいっ。とてもお似合いですっ」


 俺がそれを身に着けたのがうれしいのか、ディアが声を弾ませた。

 白銀のネックレスは目立ちすぎず、かといって地味すぎもしない。どんな力を秘めているのかわからないが、装飾品としてはよくできている。


「気に入りましたか?」

「ああ。ありがとう、ディア」

「いえ、こちらこそ」

「『こちらこそ』……?」


 俺は彼女の言葉に違和感をおぼえる。


「じ、実は……」


 ディアがおずおずと言い出す。


「実はそのネックレス、ガルディア家の婿になる者に渡されるものなのです」

「……へ?」

「お婿さんになったものの証なのですっ」

「な、なんだってー!?」


 そのネックレスは今、俺の首にさがっている。

 まさかこんなところで既成事実を作られるとは思いもよらなくて俺は叫んでしまった。

 ほくそ笑んでいるディア。

 彼女がこんな小悪魔な微笑みをするなんて……。


「気に入ってくださったんですよね?」

「う、うぐ……」


 言質まで取られた。

 ディアはにこにこしながら俺に近寄ってくる。


「悪魔アズキエルを倒し、ガルディア家の災厄を取り除いた英雄アッシュさん。どうかわたくしと結婚してください」

「のじゃじゃじゃじゃ。これは一本取られたのう!」


 スセリが腹を抱えて大笑いしていた。子孫が窮地に陥っているというのに。


「――なんて、冗談です」

「えっ」

「婿の証というのは、わたくしは今でっちあげたウソですよ」


 ふふっ、とディアがいたずらっぽく笑っていた。

 俺はあんぐりと口を開けて呆けていた。

 そんな俺のようすをディアはおかしそうに見ている。


 完全に彼女にからかわれていた。

 ディアがそんなことをするような人間とは思っていなかったから、すっかり騙されてしまった。


「でも、わたしはそんなウソをつきたいくらい、アッシュさんを慕っています。そのことを、どうかおぼえていたください」


 ディア……。

 彼女の切なげな口調に俺は少し、心を動かされた。

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