31-3
「来たれ!」
俺は自らの魔力で召喚術を発動させ、剣を呼び出した。
「スセリ! セヴリーヌ! 俺に強化魔法をかけてくれ!」
「お、おう!」
「わかったのじゃ!」
二人が俺に身体能力強化の魔法をかける。
全身に力がみなぎってくる。
俺は剣を両手で握り、悪魔アズキエルに真っ向から立ち向かった。
剣を垂直に打ち下ろす。
その斬撃でアズキエルの右腕が切断される。
がくりと姿勢を崩すアズキエル。
再び斬撃。
二撃目で今度は左腕を斬る。
両腕を失ったアズキエルは床に突っ伏した。
俺はアズキエルの背中に飛び乗り、心臓があるあたりめがけて剣を突き立てた。
突き刺さる鋭利な剣。
力を入れると、刃が深く沈んでいく。
そしてついに刃は心臓へと及んだ。
アズキエルが背中をのけぞらせる。
そして激しくのたうつ。
俺は暴れまわるアズキエルに振り落とされた。
頭部と両腕を失い、心臓を貫かれた悪魔が、上半身を激しく動かして奇妙に跳ね回る。
その動きはみるみる弱まっていく。
そしてついに動かなくなった。
俺たちは動かなくなったアズキエルを離れた位置から見続ける。
しばらくすると、アズキエルの身体が赤から灰色に変色しだした。
身体の先端から心臓に向かって灰色に変わっていく。
とうとうアズキエルは全身灰色となった。
セヴリーヌが灰色となったアズキエルに近づき、指先でつつく。
色だけでなく、身体そのものも灰と化したらしい。指先でつつかれた部分がもろく崩れ落ちた。
セヴリーヌがアズキエルの身体に蹴りをかますと、どさっと形を失って灰を巻き上げた。
ヒツジ頭の怪物は灰の山となった。
「やりました!」
フーガさんが歓喜の声を上げた。
スセリも緊張の糸が切れたのか「ふう」と息をつく。
「またしてもアッシュの手柄じゃの」
「俺はトドメの一撃を入れただけさ」
勝利をつかんだのは全員で力を合わせたからだ。
「それにしてもアッシュさん。すごいですね」
「お、俺ですか? フーガさん」
「悪魔を恐れず果敢に立ち向かう姿、まさに英雄と呼ぶにふさわしいです」
「え、英雄は大げさですよ……」
「『稀代の魔術師』の後継者である理由がようやくわかりましたよ!」
フーガさんは興奮気味に俺の手を取った。
周囲の景色がゆがみだす。
封印されていたアズキエルを倒したから、この世界もなくなろうとしているのか。
空間全体がかき混ぜられるかのようにゆがんでいく。
城の姿は消え失せ、黒と白が混ざり合う世界に変わった。
ゆがむ世界を漂っているうちにめまいがしてくる。
視界が真っ黒になる。
なにか強い力に俺は引き寄せられ、この世界から放り出された。
俺はもといた場所――ガルディア家の中庭へと帰ってきた。
少し高い位置から落下して、しりもちをつく。
続いてスセリ、セヴリーヌ、フーガさんも空中に突如出現して地面に落っこちてきた。




