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30-7

「待つのもまたメイドの役目です。マリアさま」

「わ、わたくしはメイドではありませんわよ……」


 それでもマリアは最終的に納得してくれたようだった。

 ……少し、ふてくされているが。


「気をつけてくださいまし。アッシュ」

「ああ。行ってくる」


 スセリが最初に門をくぐる。

 次にセヴリーヌ。

 それから、目をつむりながらフーガさんが飛び込む。

 最後に俺が、白と黒が混じり合う歪みの先へと足を踏み入れた。



 門の先は以前と同じ、城の内部だった。

 場所は玉座の間。

 俺の前にはスセリとセヴリーヌ、フーガさんがいた。


「ほ、本当に異界に来たのですね……」


 落ち着きなく周囲を見回しているフーガさん。

 さすがに二度目ということもあり、スセリとセヴリーヌは落ち着いていた。


「ここには不死の魔物もひそんでおる。油断するでないぞ」


 そうスセリが言ったそばから魔物が現れた。

 中身がからっぽの、甲冑の兵士たち。

 玉座の間の出入り口からぞろぞろと現れたそいつらは、槍の穂先を俺たちに向けて襲い掛かってきた。


「吹き飛べ!」


 セヴリーヌが手を真横に払って叫ぶと、強風が巻き起こって抜け殻兵士たちを吹き飛ばした。

 兜、鎧、籠手、すね当て……バラバラになって散乱する抜け殻兵士たち。

 しかし、奴らはすぐに動き出し、再び兵士の姿に組みなおされた。

 やはり奴らは不死身らしかった。


「ガーデットの出番ですね」


 フーガさんが魔杖ガーデットを構える。

 その杖の先端にはめられた赤い宝石が怪しげに光りだす。

 すると、抜け殻兵士たちから赤い光が漏れ出てくる。

 おそらくこれは、可視化された生命力……。


 抜け殻兵士たちから漏れ出た生命力は魔杖ガーデットへと吸い寄せられていく。

 ガーデットが生命力を吸っている……。

 抜け殻兵士たちの動きが鈍くなる。

 そして生命力を吸い尽くされると、抜け殻兵士たちは一斉にバラバラになって動かなくなった。


「ていっ」


 セヴリーヌが床に転がっていた兜を蹴り飛ばす。

 兜は弧を描いて飛んでいき、遠くのほうで『コーンッ』と音が響いた。

 スセリは「ふむ」と魔物の残骸を見ながら考え込んでいる。


「あの兵士たちに生命力は宿っていないと思っていたが、そうでもなかったようじゃの」

「おそらく、魔法によってかりそめの命を宿されていたのでしょう。命無きものに命を宿す魔法は――って、スセリさんにそんな講釈は無用でしたね」


 とにかく、これで先へ進めるようになった。

 俺たちは玉座の間を出て、その先の長い廊下が延々と続く迷路へと至った。

 複雑に入り組んだ迷路を、行き止まりにぶつかりながら進んでいく。

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