3-5
俺が選んだ武器をプリシラは手にする。
「棒……ですか?」
それは金属製のロッドだった。
ロッドの長さはプリシラの身の丈より少し短いくらい。
「多段ロッドっていうらしいぞ」
このロッド特徴は、三段階の収納式になっているところ。
ふだんは三段階縮めてかさばらずに携帯させることができて、戦いのときに伸ばして使う。
狭い場所で戦うときは一段階、二段階と縮めて使うことができる、汎用性の高い武器だ。
無用に相手を傷つけることもないし、誤って自傷する心配もない。
剣と比べて扱いがかんたんで、護身用の武器としてうってつけだ。
「はいっ。わたし、この武器にしますっ」
プリシラの武器は決まった。
あとは俺か。
一応、ナイフは屋敷を追い出されるときに持ってきたが、戦闘用でも探索用でもない。
せいぜい野菜や果物を切れる程度で、探索のときにツタや枝を切ったらあっという間に刃こぼれしそうな代物だ。
戦いで相手の防具を斬った時にどうなるかは言うまでもない。
「アッシュさま! この武器はどうでしょう!」
プリシラが店の奥を指さす。
そこにあったのは騎士が使うような鋼の剣。
鋼鉄の甲冑の隣にそれは立てかけてあった。
「さすがにこれは重すぎて持てそうにないな……」
「アッシュさまがお持ちになれば凛々しく映えると思ったのですが」
プリシラがどんな想像をしているか知らないが、戦いの訓練もしたことのない俺がこんなものを持ったらフラフラでまともに立ってもいられないだろう……。
「わたしの騎士さま……王子さま……。ふふっ」
プリシラは両手を握り合わせてなにやらしあわせそうな妄想していた。
頭の獣耳がぴょこぴょこ動いている。
「おぬしに武器はいらんじゃろ」
スセリが実体化して口を出す。
「おぬしには万能の魔書『オーレオール』があるのじゃ。おぬしが『滅べ』と唱えれば国ひとつが瓦礫と化す最強の武器じゃぞ」
そ、それはそれで恐ろしい……。
いずれにせよ、手持ちの金はあまりない。
今回はプリシラの武器だけを買おう。
多段ロッドを買った俺たちは武器屋を後にした。
それから道具屋で傷薬やロープといった探索に必要そうな道具を一通りそろえた俺とプリシラとスセリは、いよいよ魔物討伐へと乗り出した。
場所はアリオトの街郊外。
古代人の遺跡まで俺たちはやってきた。
「あれが『ガードマシン』ですね」
岩の陰に隠れ、遺跡の入り口の周りを哨戒している物体を観察している俺たち。
その物体は依頼書に描かれた絵と合致していた。
ガードマシン。
古代の機械人形だ。
四足歩行の中型動物の姿をしているそいつは遺跡の周辺を守るかのように、決まった経路をなぞって移動している。
こいつがいるせいで遺跡の調査ができないと依頼書には記されていた。
遺跡の調査のため、ガードマシンを退けるのが今回の依頼だ。




