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28-6

「『オーレオール』が元通りになるまで、このプリシラがメイドの威信にかけてアッシュさまをお守りいたしますっ」


 プリシラがロッドを構え、格好をつける。

 マリアが慌てだす。

 そしてプリシラに負けじと、豊かな胸に手を添えてこう言った。


「わ、わたくしもアッシュをお守りいたしますわっ。幼馴染として」


 『幼馴染』のところをマリアは強調した。

 なんでプリシラに対抗してるんだ、マリア……。


「いい身分じゃのう。おなご二人に守られるとは。やれやれ」


 スセリにそうからかわれてしまった。



 次の日、俺とプリシラ、マリア、スセリの四人は、冒険者ギルドの代表者を連れて塔にやってきた。

 ネネはまだ眠りから覚めていない。

 治癒の魔法でケガは完治させたから、もうそろそろ意識を取り戻すと思うが。


「では、塔を登ろうか。みんな、護衛と道案内、よろしく頼むよ」


 昨日までとは違い、今日は全員一緒に塔を登った。

 目的は塔の頂上で発見した巨大な水晶の調査。

 ギルドの代表者――オーギュストさんが水晶を詳しく調べることになっている。

 オーギュストさんは冒険者ギルドに属する以前は、王立大学で古代文明について研究をしていたという。


「すごいですね、オーギュストさん。王都の大学で学者をしていたなんて」

「学者さまなのです」

「王立大学は権威の象徴。選りすぐりの秀才しか門をくぐるのを許されていませんのよ」

「僕自身はつまらない人間さ」


 そうオーギュストさんは謙遜する。


「それなら僕よりアッシュくんのほうがすごいじゃないか。万能の魔書『オーレオール』の継承者なのだから」

「そうじゃぞ、アッシュよ」


 そう言われても、俺はまだまだ『稀代の魔術師』には程遠い。スセリから見れば『オーレオール』の力をこれっぽっちも使いこなせていないのだろう。それに、この力は俺自身の努力とは無関係に得たもの。王国の最高学府で研究をしていたという経歴のほうがよほど立派だ。


「アッシュくんが『オーレオール』の継承者でよかったよ。キミならその魔書を正しく使ってくれるだろうからね」

「アッシュさまならその本を世のため人のために使ってくれますっ」

「ネネを助けたように、ですわね」

「まあ、ワシに言わせれば野心がまだまだ足りんがの」


 ネネが描いた地図を頼りに塔を登っていく。

 今登っている塔は、俺とネネが調査していたほうだ。

 スセリとプリシラとマリアが調査していたほうの塔は、最上階にはなにもなかったのだという。


「あそこに機械人形がいますっ!」


 通路を抜けて広間に出るなり、プリシラが声を上げる。


「安心してくれ。そいつは動かない」


 広間の片隅にその機械人形はいた。

 動かなくなってどれだけの年月が経ったのだろう。その蜘蛛型の機械人形は朽ち果てており、サビにまみれていた。

 プリシラは恐るおそる朽ちた機械人形に近づき、指先でそっと触れた。

 さびてざらざらした表面をなぞる。


「もう、死んじゃっているんですね」


 その口調から、機械人形をかわいそうだと思っているのが伝わってきた。

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