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そして俺とネネはついに塔の最上階へと到達した。
そこが最上階であること、あるいは中核であるのはすぐにわかった。
今までと比べてはるかに広い部屋。
天井は霞むほど高い。
ガラス張りの壁。
そして、部屋の中央には巨大な水晶があった。
「なんだあれ……」
ネネも俺も、あんぐりと口を開けていた。
こんな水晶、今まで見たことがない。
巨大な水晶は台座の上に浮遊しており、ゆっくりと上下に動きながら回転している。
古代人の都市の機能は死んでいたが、この水晶だけは当時のまま生きていた。
この水晶がどんな機能を果てしているのかはわからない。
とはいえ、とても重要なものであるのは間違いなかった。
その証拠として、水晶には守り手がいた。
「機械人形だ」
水晶の前には一体の機械人形がひざを曲げて座っていた。
人型の機械人形だ。
機械人形は俺たちの存在を認識すると、ゆっくりと立ち上がった。
右手の甲から剣の刃が出てくる。
俺たちを敵とみなしている。
「気をつけろ、ネネ」
「わかってる」
機械人形は水晶の前から動こうとはしない。
やはりこれを守る命令を古代人にされているのだ。
「アタシがあいつを倒す」
ネネがロッドを構えた。
「俺も力を貸す」
「アッシュの魔法だと後ろの水晶を傷つけるかもしれないだろ。アタシにやらせろ」
ネネは一人で戦うつもりだった。
「なら、身体能力強化の魔法をかける」
「……わかった」
やはりネネはまだ一人で戦うことにこだわっているらしく、あまりいい返事をしなかった。
だからといって、俺だってぼうっとつっ立っているわけにはいかない。
俺は魔書『オーレオール』の力を借り、ネネに身体能力強化の魔法をかけた。
「てやーっ!」
ネネが機械人形に向かって真正面から走る。
そして間合いに入るとロッドを打ち下ろした。
機械人形は真横に飛び退いてネネの攻撃を回避する。
素早い。
機械人形が反撃を繰り出す。
右手の甲に装着された剣による攻撃。
ネネはそれをロッドで受け止める。
ガキンッ。
金属同士がぶつかる音。
至近距離で押し合うネネと機械人形。
力比べはネネが勝った。
剣を受け止めていたロッドを思い切り押し出すと、機械人形は大きくのけぞった。
無防備になった機械人形の腹に蹴りをかますネネ。
大きく吹っ飛ぶ機械人形。
「くらえーっ!」
床に倒れた機械人形に、ネネはすかさず追撃を繰り出した。
振りかぶったロッドを振り下ろす。
右腕で防御する機械人形。
ネネの振り下ろしたロッドの重い一撃が右腕をもぎ取った。
勝利を確信して笑みを浮かべるネネ。
だが、その確信は早すぎた。
「危ない! ネネ!」
機械人形は左手の甲から剣の刃を出し、ネネの胸に突き出した。
刃はネネを胸を貫き、背中から飛び出てきた。