28-1
そして遺跡調査二日目。
俺たちは再び二つの塔の調査に乗り出した。
昨日描いた地図のおかげで、先日到達した場所まではあっという間にたどり着いた。
ここからまた、地図を描きながら周囲を探索していく。
俺が先頭に立って安全を確認しながら進む。後ろでネネが地図を描いていく。
細い通路を抜けて、幾度目かの広間に出たとき、視界の端に動くものを捉えた。
魔物か!?
とっさに身構える――がしかし、その動くものは窓際でさえずる小鳥だった。
ほっと息をついて笑みをこぼす。
俺たちが広間に入ると、小さな歌を奏でていた小鳥は空へと飛び立っていった。
ネネが地図を描く間、周囲を調べる。
これまでと同様、ガラクタしか落ちていない。もしかすると、古代遺物を研究する者たちにとっては貴重なものもあるのかもしれないが、少なくとも、冒険者ギルドに持ち帰って報酬になるようなものは見当たらなかった。
ネネがここまでの地図を描き終えたので、先へと進む。
階段を上り、上の階へ。
上の階も下の階と同様、細い通路と広間の連続だった。
「高いよな、この塔」
ネネが窓から下を見下ろしながら言う。
俺も彼女の隣に立って、眼下の景色を見下ろす。
古代人の朽ち果てた建物がいくつも立ち並ぶ光景が一望できる。
視界の果てにはケルタスの街が。
「古代人って、毎日階段を必死に上ってたのかな」
「いや、昇降機があるらしいぞ。機械で動く」
「へえー」
先へ進むと、それらしきものを発見した。
上から下まで続く縦穴。
ここに昇降機が設置されていて、機械によって人を運んでいたのだろう。
次の広間には機械人形がいた。
昨日戦ったのと同じ、蜘蛛型の機械人形だ。
しかし、その機械人形はすでに機能停止しており、他の機械と同様に朽ち果てていた。
壊れたからだいぶ年月が経っている。
「こいつらって、なんのために作られたんだろう」
ネネが朽ち果てた機械人形に触れる。
「今のアタシたちと同じで、国同士で戦いがあって、そのために作られたのかな」
「かもしれない」
機械人形にはいずれも武器が備わっている。
ということは、戦うために作られたのだろう。
つまり、これを作った人間には敵がいたということ。
「だとしたら、かわいそうだな。戦うために作られたなんて」
「……」
「な、なんだよアッシュ。アタシのことじっと見つめて。なんか変なこと言ったか?」
「いや、ネネの口から『かわいそう』って言葉が出てきたのが意外で」
「ばっ、バカにしてんのか!?」
ネネが顔を真っ赤にしてこぶしを振り上げてくる。
俺は「待て待て!」と彼女をなだめる。
「ネネってやさしい子だな、って思っただけだ」
「やっぱりバカにしてんだろ!」
ネネは「ったく」と振り上げたこぶしを下ろしてくれた。
そっぽを向いたその顔は少し火照っていた。
「アタシに『やさしい』なんて言うヤツ、お前がはじめてだぞ」
そう彼女はつぶやいた。