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オーギュストさんは俺とプリシラ、マリア、スセリをそれぞれ見る。
「知っているかもしれないけど、あの子はこれまでずっと、一人で遺跡調査や魔物討伐をしていた。誰かと組むなんてことは一度もなかった。僕はそれがずっと気になっていたんだ」
オーギュストさんによると、ネネが身の丈に合わない危険な依頼を受けたのは一度や二度ではなかったらしい。ギルドの職員が止めようとしても、ネネは頑としてそれを拒み、依頼を受けていたのだという。
「あの子は自分を強いと思っている。まあ、実際強いんだけどね。だけど僕はギルドの人間だから、今までたくさん見てきている。無謀なマネをして命を落としていった冒険者たちを」
ケルタスのギルドには街の性質上、子供の冒険者が多く所属している。
貧困層居住区の出身で、お金を稼ぐためにやむを得ず危険な仕事に身を投じる子供が大半だ。
そういった子供たちが遺跡調査や魔物討伐に失敗し、ひどい大けがをしたり、死んでしまうことは少なくないのであった。
「僕はいつも心配していた。あの子が依頼を受けて冒険に出るたびに。他の子どもたちのように、もう、二度と帰ってこないんじゃないかって」
でも、とオーギュストさんは微笑む。
「キミたちがいるならもう心配なさそうだ」
「でも俺たち、まだまだ半人前の新米冒険者ですよ」
「僕は期待しているよ。アッシュくん」
オーギュストさんが俺の肩に手を置く。
「どうかネネくんを守ってあげてほしい」
その声色と、手に込められた力から、彼が真剣にネネを心配してるのが伝わってきた。
「わかりました」
「ありがとう」
オーギュストさんがギルドの中に入ると、スセリが呆れた調子で言った。
「また安請け合いしおって」
「俺だってネネが心配だからな」
ネネは自分が強いと思い込んでいる。
あの性格だと、いつか必ず痛手を負うだろう。
彼女は孤独であるのを望んでいるが、実際のところ、彼女にこそ必要なのだ。隣に立つ人間が。
「アッシュは優しいですわね」
「アッシュさまはとてもお優しいかたなのですっ」
マリアとプリシラにそう言われて俺は恥ずかしくなった。
しかし、スセリはこう俺に忠告してきた。
「じゃがの、アッシュ。やさしさを与える相手は選ぶべきじゃぞ」
「俺は別に、誰彼構わず同情しているわけじゃないぞ」
「あやしいのう」
そしてスセリはニヤリとする。
「これで今度はネネを惚れさせたりしたら面白いの」
「なっ!?」
マリアがぎょっとする。
そして俺をにらみつけながら詰め寄ってくる。
近い。近いぞマリア……。
「アッシュ! あなたまさか、あの子にまで」
「そんなわけないだろっ」
「あなたの結婚相手はこのわたくしなの、忘れてはいけませんわよ」
そういうわけで、遺跡調査の一日目は終わったのであった。
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