27-6
遺跡の調査を無事に終えた俺たちはケルタスの冒険者ギルドに戻ってきた。
ケルタスに帰ってくる頃には夜になっていて、ギルドの窓からは黄色い光がこぼれていた。
ギルドは夜も賑わっていた。
ギルドの受付に行き、受付嬢に今日の調査について報告した。
「少々お待ちください。今、担当の者を呼んできますので」
受付嬢が席を外す。
そしてすぐ、一人の背の高い男性を連れてきた。
「やあ、アッシュくん。それにネネちゃん。無事に調査を終えたようだね」
「『ちゃん』はやめろ」
「ははっ。ごめんごめん。ネネくん」
おどけた調子で笑うこの男性はギルドの職員で、今回の遺跡調査の担当をしているオーギュストさん。
背が高く、肩幅が広い大柄な体形だが、とても親切で温厚な人だ。
「それに調査はまだ終わってない。日が暮れたからいったん切り上げたんだ」
「どれ、地図を見せてくれないかな」
プリシラとネネがオーギュストさんに地図を渡す。
オーギュストさんは二人の描いた地図を「ふむ」と真剣な目つきで見る。
「アタシたちはまだ遺跡の塔には半分くらいしか登っていない。明日も調査をする」
「魔物や機械人形には出くわしたかい?」
「そりゃあ、遺跡なんだから、いるに決まってるだろ」
「倒した証拠を持っているなら、ギルドから討伐報酬がもらえる。忘れずにね」
「わかってる。アタシは素人じゃないんだぞ」
「そうだったね。ネネくん」
オーギュストさんが地図を二人に返す。
「きれいな地図だね、プリシラちゃん。冒険者になりたてなのによくやってくれてるよ」
「アッシュさまのメイドですのでっ」
えっへん、とプリシラが胸をそらした。
オーギュストさんは微笑ましげに笑った。
俺はなんだか気恥ずかしくなって頬をかいた。
「なにはともあれ、今日の調査、ご苦労だったね。今日はゆっくりと休むといい。明日の調査もがんばってほしい」
オーギュストさんが俺たちの前から立ち去った後、機械人形の討伐報告をした。
討伐した証拠となる機械人形の部品はネネがしっかり回収していた。
受付で受付嬢に部品を渡し、書類に詳細を記入する。
これで後日、討伐報酬が受け取れる。
「さてと、帰るか。ふわぁー」
ネネが思い切り背を伸ばし、眠たそうにあくびした。
明日の待ち合わせの時刻を決め、俺たちはギルドの外で解散した。
「寝坊するなよ、お前ら」
「ああ。おやすみ、ネネ」
「じゃあな」
ネネが夜の闇の先に消える。
それを見計らったかのように、ギルドからオーギュストさんが現れた。
「どうかされましたの? オーギュストさん」
「ああ、いや、キミたちに感謝するのを忘れててね」
「別に感謝はいりませんよ。これも冒険者の仕事ですので」
「違うよ」
とオーギュストさんが首を横に振る。
「ネネちゃ――おっと、ネネくんについてさ」