27-4
懐中時計で時間を確認する。
そろそろ戻らなければならない時間だ。
窓の外から見える太陽もだいぶ傾いている。
「ネネ。探索はここまでにしよう」
「そうだな」
俺とネネは、もと来た道を引き返しだした。
塔の内部は入り組んだ細い通路で構成された、ちょっとした迷路だったので、さっそくネネの描いた地図が役に立った。
探索時とは逆に、今度はネネが地図を手に先頭に立って、正しい道を進んでいった。
折れ曲がった細い通路。
広い空間。階段。
その連続。
この調子だと約束した時間までには塔から出られそうだ。
そう思っていたが、しかし、
「……しっ。なにかいる」
通路を歩いていたところでネネが立ち止まり、俺を制した。
ネネがすり足で曲がり角まで行き、そっと顔を出して曲がり角の先を見る。
「……機械人形だ」
俺もネネと同じように、曲がり角に身体を隠しつつ、顔だけを出す。
曲がり角の先の広い空間。
そこに一体の機械人形がいた。
八本の鋭い足を生やした、蜘蛛に似た姿の機械人形だった。
蜘蛛型の機械人形は微動だにしない。
目に光が宿っていることから、死んではいない。
蜘蛛型の機械人形はこちらを向いていて、広間に入った瞬間、気づかれるだろう。
「二人でいっせいに飛びかかるか」
「待て。ここは俺にまかせてくれ。俺の魔法で一撃で倒す」
「できるのか?」
「できる」
――か、どうかはわからないが、俺はそう言い切った。
「わかった。アッシュ、頼むぞ」
ネネは俺を信じてくれた。
俺は目を閉じ、精神を集中させる。
魔書『オーレオール』から流れ込んでくる膨大な魔力を操る。
その魔力を完全に掌握したとき、俺は目を見開いた。
「雷よ!」
曲がり角を出て広間に躍り出るのと同時に、俺はそう唱えた。
かざした手から、閃光と破裂音を伴って稲妻が走る。
稲妻は一瞬して蜘蛛型の機械人形に直撃した。
爆発し、後方に吹き飛ぶ機械人形。
壁に激突し、床に落ちる。
ぐしゃりと倒れた機械人形の目からは光が消え、胴体からは煙が立ち昇っていた。
「やった!」
ネネが歓喜の声を上げて広間に入ってきた。
しかし、勝利を確信するのは早かった。
突如、ネネの目の前に先ほどと同じ蜘蛛型の機械人形が降ってきた。
「なっ!?」
「ネネ!」
機械人形が鋭い足でネネを突く。
尖った足の先がネネの胸に到達する――寸前、俺はネネをとっさにつき飛ばしてそれを防いだ。
「稲妻よ!」
俺は魔法を唱えたが、蜘蛛型の機械人形に先んじて回避行動を取られた。
俺の手から放たれた稲妻はなにもない場所を走り、壁にぶつかって爆発した。
「障壁よ!」
俺の周囲に魔法の障壁がせり上がる。
側面にいた蜘蛛型の機械人形が鋭い足で障壁を連続して突いてくる。
障壁に無数の亀裂が走る。