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「別に俺たちは手柄を横取りするつもりは――」
「こんなヤツ、アタシ一人で倒せる。これまでもそうしてきたんだ」
ネネはあくまでも自分一人で機械人形を倒すことにこだわっている。
機械人形を仰ぎ見て、キッとにらみつけるネネ。
そして再び飛び掛かり、機械人形の頭部にロッドを打ちつけた。
ガンッ。
機械人形の頭部の、ロッドで叩いた部分がへこむ。
しかし、機械人形はその程度ではびくともせず、反撃を繰り出してきた。
振り上げたこぶしを垂直に打ち下ろす。
きわどい反射神経でネネはそれを回避する。
ネネのいた場所にこぶしが落ち、灰色の地面を粉砕して穴を空けた。
機械人形の攻撃は鈍重だが、一撃でも食らえば致命傷は必至。
そしてネネのロッドによる打撃攻撃はまったく通じていない。
戦いはネネが一方的に消耗するばかりであった。
このままではいずれネネがやられてしまう。
手出しするなと言われたが、助けないわけにはいかない。
俺は魔書『オーレオール』を手にし、心を研ぎ澄ませる。
そうしつつ、ネネの動きをしっかりと目で追う。
ネネが機械人形の攻撃を避け、その動作から続けて機械人形に接近を試みた。
「ていやーっ!」
そしてロッドによる攻撃をするのと同時に、俺は魔法を唱えた。
「力よ!」
魔法の光がネネに当たる。
そしてネネのロッドが機械人形の左脚を横から殴打する。
すると、ロッドはすさまじい威力を発揮して左脚を折り曲げた。
姿勢を崩した機械人形が横倒しになる。
「な、なんだ今の力……」
ネネは目をまんまるに見開いて自分のロッドを眺めている。
「ネネ、機械人形をにトドメを!」
「わ、わかった!」
ネネは横倒しになった機械人形の頭部を再びロッドで攻撃した。
俺の魔法によって限界を突破して威力が強化されたロッドの一撃は、機械人形の頭部をバラバラに破壊した。
装甲がはがれ、中身の部品が飛び出す。
頭部を壊された機械人形は完全に動きを停止させた。
撃破したのだ。
「やったな、ネネ」
「あ、ああ……」
ネネは自分の力がいきなり強くなったのを不思議がっていて、機械人形を撃破したものの、どうにも納得のいかないようすだった。
「アッシュ。もしかして、お前が魔法で助けてくれたのか」
「すまない。手出しするなとは言われたけど、どうしても見ていられなくなって」
「……」
それを聞いてむっとしたネネであったが、自分だけの力ではあの機械人形に敵わなかったであろうことも自覚していたらしく、なにも言いだせずに押し黙っていた。
なるべく彼女のプライドを傷つけないように助けたつもりだったが、やはりダメか。
「ネネ。これから俺たちは協力して遺跡を探索するんだ。力を合わせることは悪いことじゃない」
「そうですよネネさま。みんなでがんばりましょうっ」
「今回はわたくしたちが助けましたが、わたくしたちがネネを頼るときがきっとありますわ」
「……わかったよ。アタシの負けだ。二度も負けを認めさせるなんてやるな、アッシュ」
ふっきれたようにネネは笑った。
俺はネネに手を差し伸べる。
彼女はその手を握ってくれた。