26-5
「ガードマシン、あっちに行っちゃいましたよっ」
ガードマシンが遠くに行くと、俺たちは物陰から出た。
プリシラがほっと息をつく。
「あの程度なら、わたくしの魔法でやっつけられましたわよ」
「かもしれないが、戦闘は避けられるに越したことはない」
今回依頼されているのは魔物討伐ではなく、遺跡の探索だ。
無意味に戦闘して消耗するのは避けたい。
それから俺たちは地図に従って旧人類の滅びた街を歩いていった。
慎重に歩を進める。
途中、ガードマシンなどの機械人形に何度か遭遇するも、運よく戦わずやり過ごせた。
ガシャン、ガシャン、ガシャン……。
機械人形の足音が響いてくる。
この足音からしてかなり大きい。
俺たちは物陰に身をひそめる。
「ひえっ」
そして機械人形が姿を現したとき、プリシラが小さく声を出した。
その機械人形は、今まで出会った機械人形の中で一番大きかった。
竜のアスカノフと同じくらいの巨体だ。
竜と異なるのは、背中に翼を生やしていないことか。
翼無き竜の機械人形は、複雑な機構の脚部を稼働させてゆっくりと歩き、俺たちの目の前を横切っていった。
「あんな大きな機械人形もいるんですね。わたし、びっくりしました」
「さすがにあんなのと戦ったら勝ち目はないな」
と、そのときだった。
遠くのほうから爆発音が聞こえてきた。
「なんですの!?」
動揺するマリア。
プリシラが頭の獣耳をぴんと立てて、遠くの音に耳を澄ましている。
「……爆発のしたほうから金属を叩く音がします。誰かが戦ってますっ」
「もしかしてネネか!?」
「かもしれんの」
再び爆発音。
音のした方向から黒い煙が立ち昇っている。
機械人形と戦闘しているのか。
「加勢にいこう!」
俺たちは駆け足で音のした場所へ向かった。
「ていっ! でやあっ!」
音のした場所へ駆けつけると案の定、紅蓮の髪の少女ネネが機械人形と戦っていた。
機械人形は二足歩行の巨人型だった。
ゴーレムに似ている。
違うのは、石でできているゴーレムと違って、金属でできていること。
「くらえっ!」
ネネは跳躍し、機械人形の腕にロッドの一撃を見舞わせる。
金属の腕がへこんだが、しかし、機械人形はびくともしない。
機械人形の目が光り、光線が発射される。
ほぼ同時に飛び退くネネ。
灰色の地面に光線が当たると爆発が起き、黒い煙が周囲に巻き起こった。
「けほけほっ」
煙に咳き込む俺たち。
「くっそー。こいつ、固いな……」
ネネの顔には疲労の色が見えている。
機械人形の全身には無数のへこみがある。
ネネがロッドで攻撃した痕だろう。
機械人形はかなり不格好になっていたが、身体の機能に問題はないようで、金属のこぶしを自在に振り回してネネを翻弄していた。
「ネネ!」
「おっ、お前ら!」
ネネがようやく俺たちに気付いた。
しかし、ネネは俺たちにこう言った。
「こいつはアタシの獲物だ。手出しするなよ」