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26-3

「さあ、ヴィットリオよ。今のうちに雨漏りの修理にいくのじゃ」

「あ、ああ……。わかった」


 さすがのヴィットリオさんもこんなすごい魔法を見せられて動揺を隠せていなかった。


「わたしも手伝いますっ」


 プリシラが納屋から折り畳み式のはしごを持ってきて組み立て、屋根にかけた。

 ヴィットリオさんがはしごを使って屋根に登る。

 俺は修理するための道具が入った工具箱と、屋根の補修に使う木の板をヴィットリオさんに渡す。


 屋根に登ったヴィットリオさんは、屋根の壊れた部分まで行き、雨漏りの原因となった穴に木の板をあててふさぎ、カナヅチで釘を打ち付けた。

 以前もやったことがあるのだろう。ヴィットリオさんは手際よく屋根の修理を終わらせた。


 それにしても、街の人たちもびっくりしているだろうな。大雨が降っているのに『夏のクジラ亭』だけ晴れているだなんて。

 宿から見る外の光景もふしぎだった。晴れている場所と雨が降っている場所の境界がはっきりとわかれていて。まるで『夏のクジラ亭』の周りに見えざる壁ができて、雨を阻んでいるかのようだった。


 ヴィットリオさんがロビーに戻ってきてしばらくすると魔法が解け、晴れた空を再び雨雲が覆いだし、周囲と同じように雨が降りしきりを風が吹きすさびだした。


「助かった。礼を言う」

「すごいわね、アッシュくん。これが魔術師の力なのね」

「普通の魔術師はここまでできん。アッシュは特別なのじゃ」

「アッシュさまは特別なのですっ」

「俺じゃなくて『オーレオール』のおかげなんだけどな」


 なんだか照れくさくなって俺は頬をかいた。


「アッシュはよくやっておるのじゃ。『オーレオール』を暴走させずに見事、自分の力として操っておるのじゃからな」

「ぼ、暴走!?」


 スセリから物騒な言葉が出てきて俺は声を上げる。


「『オーレオール』はその膨大な魔力を秘めているゆえ、正しく用いらんと暴走して所持者を破滅させる代物なのじゃ。だからナイトホークも自分で『オーレオール』を使おうとしなかったのじゃろう」


 知らなかった。『オーレオール』がそんな危険をはらんでいただなんて。

 考えれば当然か。『稀代の魔術師』が作った道具なのだから。


「それならスセリ。あらかじめ言ってくれよ。『オーレオール』がそんな危ないものだって」

「忘れておったのじゃ。のじゃじゃじゃじゃじゃっ」


 一歩間違えれば俺は、魔力が暴走して大変なことになっていたわけか。今までなにも考えず『オーレオール』の魔力を借りていたが、これからは変に意識してしまいそうだ。かえって危ないことにならないといいが……。

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