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25-6

 それから俺たちは道具屋へ行き、遺跡探索をするための道具を調達した。

 今回探索するのは未調査の遺跡。

 つまり、俺たちがはじめて探索をする冒険者になる。


 これまでは事前に冒険者ギルドから遺跡の地図を渡されていたが、今回は自力で地図を描かなければならない。

 万が一、迷子になってしまったらおしまいだ。

 だが、その分、報酬は破格。

 遺跡の地図を描けば描くほど報酬も増えていく。


「地図描きはこのプリシラにおまかせくださいっ」


 地図描きの役目はプリシラだった。

 プリシラはいつかこういうときが来たときのために、他の先輩冒険者から地図の描きかたを習っていたのだ。

 本当に努力家だ。プリシラは。


「プリシラ。頼みましたわよ」

「はいっ。いっしょうけんめいがんばりますっ」



 そして翌日。

 その日は朝から雨が降っていた。

 風も強い。

 雨粒が窓をしきりに叩いている。


 俺たちは『夏のクジラ亭』の自分たちの部屋にこもっていた。

 遺跡探索は明日だ。

 それまでに晴れればいいのだが。


 俺はベッドに横になり、魔書『オーレオール』を開いた。

 しおりを挟んだところから読んでいく。

 『オーレオール』にはスセリによって数々の魔法が記されている。


 大半が破壊的で、冒涜的で、使うのをためらうものばかり。

 スセリの言うとおり、この魔書を読破したころには、国の一つや二つ、軽々支配できるようになるだろうな。

 むろん、俺はそんな野望は抱いていないが。


 スセリはなにを思って魔法を作りだしていたのだろう。

 まさか、世界征服か。

 ありえないことではない。


 ――ワシには野望がある。凡百の徒には成しえぬ野望が。


 以前、スセリはそう言っていた。

 魂を『オーレオール』に縛られていたころは、スセリに自由はなかったが、セヴリーヌの魔法によって若返らせた肉体を得た今は、完全な自由を手に入れている。

 つまり、スセリはいつでもその『野望』を実行することが可能ということ。


 本当にスセリに肉体を与えてよかったのだろうか。

 俺はときどき、そんな不安をおぼえた。

 とはいえ、今のところはのじゃのじゃ言っているだけの子供なのだが。


「アッシュ。起きておるか」


 ウワサをすれば。

 スセリがノックもせずに俺の部屋に入ってきた。


「ノックくらいしてくれよ」

「のじゃじゃじゃじゃ。思春期の少年じゃのう」


 思春期は関係ないような……。

 スセリが俺が寝転がるベッドに腰かけてくる。


「ほう、『オーレオール』を読んでおったか。感心感心、なのじゃ」

「あんまり役に立ってないけどな」

「それは聞き捨てならんのじゃ」

「俺にはもっと基礎的な魔法が必要だからな」

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