25-4
「プリシラ。ロッドを貸してくれ」
「は、はいっ」
プリシラから多段ロッドを受け取る。
そしてそれを最大まで伸ばし、両手で持って構えた。
「俺の名前はアッシュ」
「アタシはネネ。ケルタス一の冒険者だ」
ネネ。
燃えるような赤髪の少女はそう名乗った。
それにしてもケルタス一を自称するとは、かなりの自信だな。
「お前、ウワサによると竜を倒したんだってな」
「それを知っていながら俺たちにケンカをふっかけてきたのか」
「お前たちを見る限り、どうにもそんな奴には見えなくてな」
ネネも俺からすれば、ただのやんちゃな子供にしか見えないのだが。
「だから自分で確かめることにしたんだ」
「ケガしてもしらないぞ」
「お前こそ、アタシをただの子供だと侮っていると痛い目見るからなっ」
すると、ネネの姿が忽然と消えた。まばたの一瞬の間に。
「上です! アッシュさま!」
プリシラに言われ、上を向く。
俺の真上にはネネがいて、今まさに落下攻撃を仕掛けているところだった。
落下の速度と自身の体重を乗せたロッドの一撃を繰り出してくる。
俺は自分のロッドでそれを受け止める。
さいわいにも小柄な彼女の一撃は軽く、容易に防御できた。
俺とネネは肉薄した状態になる。
俺は真後ろに飛びのくも、ネネはすぐさま接近してきてロッドによる攻撃を連続して仕掛けてきた。
それらをすべて捌く。
攻撃は軽いが、とにかく手数が多い。
防御に手いっぱいで反撃の隙が見つからない。
距離を取ろうとしてもネネは執拗に接近してきて俺を逃がそうとしなかった。
再びネネの姿が消える。
「うしろですわ!」
マリアに言われて真後ろを向く。
危ういところでネネの背後からの攻撃を受け止めた。
なんて素早いんだ……。
しかもちっとも息切れしていない。
このままでは俺が先に体力が尽きて隙をさらしてしまう。
魔法を使うしかない。
「風よ!」
俺は魔法を唱えた。
自身を中心に風の柱が立ち昇る。
強風によって吹き飛ばされるネネ。
しかし、空中で姿勢を整え、見事に着地する。
魔法は防がれた。
だが、これで距離はとれた。
「来たれ!」
俺は続けざまに召喚術を発動した。
身構えるネネ。
俺のかざした手から魔法が放たれると思ったのだろう。彼女は前方からの攻撃に対して防御をしている。
しかし、俺の召喚術が発生したのは、彼女の頭上だった。
「がっ!?」
ゴーンッ。
ネネの真上に召喚された金属の鍋が落下し、彼女の頭に直撃した。
不意の攻撃にのけぞり、しりもちをつく。
「いってー……。な、なんで空から鍋が……」
「勝負あったな」
「なっ!?」
しりもちをついて頭をさすっているネネに俺はロッドの先を向けた。
人物紹介
【ネネ】
腕利きの冒険者の少女。
とても幼いが、その実力は大人顔負け。