24-7
「よいではないか。頼もしい仲間が増えたのじゃから」
スセリがマリアを味方する。
「お友だちになれて、しかもいっしょに旅ができるなんて、わたし、うれしいですっ」
プリシラも彼女を歓迎しており、結局のところ反対しているのは俺一人だけだった。
マリアが「ドヤッ」て顔をして勝ち誇っている。
もはや俺が折れるしかなかった。
こうして俺とプリシラとスセリの三人に新たな仲間が加わったのであった。
冒険者ギルドを後にし、西区路地裏の『夏のクジラ亭』へと帰ってきた。
店の前には巨大なゴーレム、ウルカロスと、宿のおかみクラリッサさんがいた。
クラリッサさんがウルカロスに弁当を渡しているところだった。
「たまには店に顔を出しなさい、ってセヴリーヌちゃんに言ってね」
「かしこまりました。いつもおいしいお弁当、ありがとうございます」
セヴリーヌのつかいとしてウルカロスが『夏のクジラ亭』にやってくるのは日常になっていた。
セウヴリーヌ本人はめったに家の外に出ず、魔法の研究に明け暮れている。
そんな主に健康的な食事を与えるため、ウルカロスは家と宿を往復しているのである。
俺たちが訪れる前のセヴリーヌはなにを食べていたのだろう……。
「これはこれは、みなさん。こんばんは」
ウルカロスが俺たちに気付いてあいさつしてきた。
「やあ、ウルカロス。セヴリーヌはあいかわらずか?」
「はい。あいかわらずでございます」
ウルカロスによると、セヴリーヌは夜遅くまで起きていて、昼過ぎまで寝るようなだらしない生活を続けているのだという。
クラリッサさんが俺たちのように『夏のクジラ亭』で暮らすことを提案しても、彼女は「魔法の研究ができない」とそれを断った。
だからせめて食事だけでも、とウルカロスに弁当を届けてもらっているのである。
「それではみなさん、さようなら」
ずしん、ずしん、ずしん……。
足音を響かせながらウルカロスは俺たちの前から去っていった。
宿に入った俺たちは各々の部屋で荷物を置いてから食堂に集まって食事をとった。
今夜のヴィトリオさんの料理は鶏肉のステーキだった。
魔物討伐で身体を動かして空腹だった俺たちは、それをぺろりと平らげたのであった。
「とても美味でしたわ」
「まんぷくですー」
「満足したか」
「うむ。大満足なのじゃ」
「ならいい」
ヴットリオさんはぶっきらぼうな口調でそう言った。
「ですが、あんな少しの宿賃でこんなすばらしい料理をいただけるなんて、なんだか申し訳ないですわ」
「俺もそう思う」
今でこそ一応、宿賃を払っているが、クラリッサさんは最初、その少しの宿賃すら受け取ろうとしなかった。
――あなたたちにこの宿にずっといてほしい、って思ってるのよ。
気持ちはうれしいが、さすがに銀貨の一枚も払わずに屋根のある寝床とごちそうを毎日提供してもらえるのは良心がとがめるので、ガルディア家の件が解決して冒険者として本格的に活動を始めて以降、普通の宿泊客と同じ分だけ宿賃を払うようにしたのであった。
それでもかなり安いのだが。
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