23-7
スセリが廊下の先を指さす。
「セヴリーヌが行ってしまったのじゃ」
「なっ!?」
気が付くと、セヴリーヌが俺たちを置いて先に行ってしまっていた。
彼女の姿が曲がり角の向こうに消える。
俺たちは慌ててセヴリーヌを追いかけた。
セヴリーヌを追いかけた先は、大きな広間になっていた。
社交パーティーをするような場所だ。
セヴリーヌはシャンデリアの真下――広間の中心に立っていた。
「勝手に先に行くなんて危険だぞ」
「お前らがくだらん話を延々してるからだろ」
そう言われては反論できなかった。
俺たちは周囲をきょろきょろと見渡す。
ようやく迷路が終わったが、ここにもなにもない雰囲気だ。
なにかがあるのはあの『扉』の先だろう。
広間の奥には、ひときわ大きな扉があった。
セヴリーヌが扉に近寄って押したり引いたりしてみる。
扉はびくともしない。
いらだちをあらわにしたセヴリーヌは足で扉を蹴りだした。
ガンガンガンッ、と何度も。
ら、乱暴な奴だ……。
でも、小さな少女がいくら蹴ったところで扉が蹴破れることはなかった。
ついにセヴリーヌは扉から距離を取り、ステッキをかざした。
そして叫んだ。
「吹き飛べ!」
ステッキの先端から光線が発射され、扉に直撃する。
派手な爆発。
俺たちは腕で顔をかばい、爆風を防ぐ。
髪と服を暴れさせる激しい爆風が駆け抜けた。
爆発が収まってゆっくりと腕を下げる。
セヴリーヌの魔法を受けたというのに扉は傷ひとつついていなかった。
普通の扉なら木っ端みじんになるはずの威力だったのに。
どうやら力押しでどうにかなるものではないらしい。
これだけ強力な扉で封じられているということは、この先には間違いなくなにかがある。
「アッシュさま。この扉、カギ穴がありますっ」
「おぬしの召喚術の出番じゃな」
「これ、開けていいのか?」
「いいから開けろッ」
このままでは俺までセヴリーヌの魔法の餌食になりそうだったので、素直に従うことにした。
――頭の中で描く。カギの姿を。
ぼやけた姿が鮮明になったとき、俺は魔法を唱えた。
「来たれ」
俺の手のひらの上に小さな魔法円が出現し、そこから小さなカギが現れた。
カギを扉のカギ穴にさす。
そしてゆっくりカギを回すと手ごたえがあり、ガチャリと音がした。
「開きましたっ」
「すごいですわ、アッシュ。どうやってこの扉の鍵を呼び出しましたの?」
「それが、俺にもよくわからないんだよな」
頭の中で漠然とした『カギ』を思い描くと、なぜか扉に合致するカギが現れる。どうしてそうなるのか、俺もよくわからないまま使っているのである。
原理はわからないが、扉は開いてくれた。
「それじゃ、開けるぞ」
俺は扉をゆっくりと押す。
ギィ……。
あれほど頑丈だった扉は、少し力を入れただけでかんたんに開いた。
扉の先にはなにがあるのか。
俺は慎重に扉を開けた。
扉の先も広い空間になっていた。
そしてその中心には、巨大な怪物が鎖につながれていた。
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