23-3
「待て! スセリ!」
俺の制止も聞かず、スセリは『門』と呼んだ黒と白の渦の中に入ってしまった。
門の向こう側の世界へと彼女は行ってしまい、その場に取り残された俺とプリシラとマリアは立ち尽くすばかりだった。
「俺たちも入ろう」
スセリが行ってしまったのなら、俺たちも行かねばならない。
俺はそっと腕を伸ばし、渦巻く門へと手を近づける。
はらはらとした表情で俺を見つめるプリシラとマリア。
勇気を振り絞り、腕を門に突っ込んだ。
俺の腕は手首まで渦の中に入ってしまった。
「アッシュ、痛くありませんの?」
「特に感触は無いな……」
そのままゆっくりと腕を渦の中に入れていく。
肩のあたりまで入ったところで、手探りで門の向こうを確かめてみた。
すると、いきなり何者かに手首を掴まれた。
「うわっ!」
「アッシュ!」
「アッシュさま!」
それから腕を思いっきり引っ張られ、俺は門の中へと引きずり込まれてしまった。
俺は瞬時にして門の先の世界へとやってきた。
背後にはたった今、通り抜けてきた門が渦巻いている。
「なにをもたもたしておったのじゃ」
そして目の前には、俺の腕を掴んだスセリがいた。
俺を引きずり込んだのはスセリだったのか……。
「いきなり腕を引っ張るなよ……。びっくりしたじゃないか」
「おぬしが腕だけ出してひらひらさせておったからなのじゃ。臆病者じゃのう」
スセリは悪びれなくそう言った。
「ひゃっ」
「きゃあっ」
続けて門からプリシラとマリアも現れた。
かたくつむっていた目をおそるおそる開き、それから周囲を見渡す二人。
「ここが……」
「門の先の世界……」
門の先の世界は城だった。
俺たちはどこかの城の中にいた。
ここがどうして城とわかったかというと、俺たちのいる広い部屋の最奥に玉座らしきものがあったからだ。
経年を感じさせる薄汚れた白い壁と床。
俺たちがいる玉座の間の入り口から玉座まで赤いカーペットが敷かれている。
窓の外に映っているのは、白と黒が渦巻く異様な景色。
「誰もいませんわね」
玉座の間はしんと静まり返っていた。
玉座に座す君主も、それを従う兵士もいない。
いるのは俺たちだけ。
「スセリさま。ここはどこなのですか?」
「おそらく、セオソフィーとフィロソフィー、二つの宝珠の中に封じられていた世界じゃろう。ワシたちのいる世界とは別の世界じゃ」
「宝珠の中に、どうしてこんな世界が……」
「それはもっと調査をせねばわからんのじゃ」
俺たちは手分けして玉座の間を調査した。
しかし、ここにあるのは王が不在の玉座だけで、他になにもなかった。
他の場所を調査しようとしたとき、玉座の間の入り口から悲鳴が聞こえてきた。
「うぎゃーっ!」
セヴリーヌの声だ。