23-1
セヴリーヌのようすを確かめにいったのは次の日だった。
今日も快晴だ。
気の持ちの良い眺めの海沿いの道を歩いて、灯台のそばにある彼女の家へと行く。
ヴィットリオさんはセヴリーヌのためにサンドイッチを作って俺たちに持たせてくれた。
トマトと鶏肉のサンドイッチだ。
セヴリーヌのやつ、喜ぶに違いない。
残念なのは、彼女はロクに味わおうともせず猛烈な勢いでこれを食らうだろうということ。
丹精込めたヴィットリオさんの料理も、彼女にかかればあっという間に平らげられてしまうのであった。
「さてさて、セヴリーヌはどうしておるかの」
「結局、宿には来ませんでしたね。セヴリーヌさま」
「『夏のクジラ亭』に食事しにこないくらい、セオソフィーとフィロソフィーの研究に没頭しているのかもな」
「いんや、転移に失敗して壁に尻が埋まって出られんのかもしれんぞ」
スセリがそんな冗談を言った。
「ねえ、プリシラ。これを見てくださいまし」
マリアがなにかを載せた手のひらをプリシラに見せてくる。
「わあっ、キレイな貝殻ですっ」
マリアの手のひらにあったのは貝殻だった。
貝殻は桃色に透けていて、宝石のようであった。
こんな透明な貝殻もあるのか。
「浜辺で拾いましたのよ。プリシラに差し上げますわ」
「いいんですか!?」
「友好のあかしとして受け取ってくださいな」
「ありがとうございますーっ」
プリシラが素直な笑顔を見せて、マリアは満足げだった。
「これから共に旅をするのです。仲良くいたしましょう」
「はいっ。こちらこそ、よろしくお願いいたしますっ」
ランフォード邸では一触即発の危機だったが、仲良くなれたようでよかった。
「ではアッシュ、行きますわよ」
マリアが俺の腕に自分の腕を絡めてくる。
その大胆な行為に目をまんまるにするプリシラ。
彼女も負けじと、俺の反対側の腕をつかんできた。
二人とも自分のほうへと俺を引っ張るせいで腕が痛い……。
「なら、ワシはこうするかの」
おまけにスセリが俺の背中に飛び乗ってきた。
両手に花どころか、背中にまで負うハメになった。
「きわめて歩きづらいんだが……」
「アッシュが悪いのですわよ」
「そうですよ」
本当に仲良くなれたんだよな……?
もしかすると、俺の気づかない水面下で、し烈な主導権争いが繰り広げられているのかもしれない……。
とりあえずスセリ。お前は背中から降りろ。
このままではまともに歩けなかったので、どうにか説得してマリアとプリシラの腕をほどき、スセリを背中から降ろした。
それからさらに海沿いの道を歩き、ようやくセヴリーヌの家に到着した。
家の前は巨大なゴーレム、ウルカロスが守護していた。