表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

141/838

20-7

「あははっ。シワシワのばーさんだなっ」


 セヴリーヌが笑う。

 しかしスセリはまったく気にしているようすはなかった。


「人間誰しも、最後はこうなる定めなのじゃよ。セヴリーヌ」

「普通の人間ならな。アタシは天才で最強の魔術師だから、ずーっと歳をとらないし、死ぬことだってないんだ」

「かたちあるものは、うつろい、失われるからこそ価値があるのじゃ」

「なんだそりゃ」


 魂の移し替え。

 肉体の時間の凍結。

 スセリとセヴリーヌはお互い別々の方法によって不老を獲得した。

 永遠の命が最高の幸福であるかはまた別の話だが。

 少なくとも、セヴリーヌはスセリの言葉の重みを理解できていなかった。


「スセリさま。ご遺体を残したのはスセリさまだけなのですか?」

「ん? それはどういう意味じゃ。プリシラよ」

「スセリさまの旦那さま――リオンさまのご遺体は残していないのですか?」


 その言葉にセヴリーヌが反応する。

 ロコツに不機嫌になった。

 スセリの夫であるリオンはセヴリーヌが恋していた相手――つまり、彼女たちは三角関係だったのだ。

 セヴリーヌはスセリがリオンを奪ったと思い込んでおり、今も根に持っているのだ。


「リオンは永遠の命は望んでおらんかったのじゃ」


 スセリがさびしげな笑みを浮かべた。

 その表情には彼女の孤独がうっすらと映っていた。

 リオンという人に会ったことはないが、愛する人を残し、定められた運命をあえて受け入れたということは、きっと立派な人だったのだろうと思った。


「さて、それよりも、セヴリーヌよ。おぬしの時間魔法でワシの遺体を若返らせるのじゃ」

「わかってる。……お前に力を貸すのはシャクだけど」

「これは取引なのじゃ」

「結局お前は死ぬのが怖いんだな」


 セヴリーヌは棺の中の遺体に手を触れる。

 そして目を閉じて集中しだす。

 すると彼女の輪郭が光を帯びだした。

 魔力が漏れ出ている。

 彼女の髪がふわりと舞い上がる。

 彼女の手を伝って魔力がスセリの遺体に流れ込んでいく。


「時間よ、巻き戻れ」


 静かにセヴリーヌが唱える。

 すると干からびたスセリの遺体は血色を取り戻し、健康的な姿になった。

 白髪が徐々に銀色の髪へと変わっていく。

 身体中にきざまれていたシワがなくなっていき、みるみるうちにスセリの遺体は30代ほどの年齢の姿になった。

 そこからさらに若返っていく。


 スセリの身体の時間が戻っていくのを、俺とプリシラとマリアは息を呑んで見守っていた。

 遺体が20代の姿になると、若さを兼ね備えた魅力的な女性へと変わった。


 更に時間は逆行していき、彼女の姿に幼さが現れてくる。

 背が縮み、顔には垢抜けなさが現れてくる。

 そしていよいよ、その姿は俺たちの前にいるスセリの姿と一致するようになった。


 そこでセヴリーヌは魔法を止める。

 浮かび上がっていた髪がすとんと垂れる。


「終わったぞ」


 棺の中には銀髪の少女の遺体が眠るように納まっていた。

【読者の皆様へのお願い】



『小説家になろう』の機能

『ブックマークに追加』と☆での評価をしていただけるとうれしいです。



現時点で構いませんので


ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価をお願いいたします。


執筆活動の大きな励みになります。



よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ