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2-6

「の、のじゃじゃじゃじゃ……」


 くやしがっているスセリ。

 まあ、そうだ。実績のない俺たちにいきなり高難易度の依頼は斡旋できないよな。


「あっ。少々お待ちください」


 別の依頼をさがしにいこうと背を向けた俺たちを受付嬢は呼び止める。


「あなたのお名前はアッシュさまでよろしかったですか?」

「そうですけど。それがどうかしましたか」

「今朝がた、アッシュさまをご指名で依頼が届いております」


 俺を指名?

 どういうことだ。昨日、冒険者登録したばかりの俺の存在を知っていて、しかも指名で依頼までしてきただと?

 俺とプリシラとスセリは訝りながら受付まで戻り、受付嬢から依頼状を受け取った。


「なんて書いてあるのですか? アッシュさま」


 依頼内容は――隣のアリオトの街までの護衛。

 依頼人は――マリア・ルミエール!?


「アッシュ! アッシュはいますの!?」


 扉が勢いよく開かれ、その当人、マリア・ルミエールが冒険者ギルドに現れた。

 俺の姿を認めた彼女はにこりと笑顔になる。

 そして小走りで駆け寄ってきた。


「マリア……」

「アッシュ、依頼はもう受け取りました?」

「どういうことだよ、これは」


 俺はひらひらと依頼状を彼女に見せつける。

 マリアは呆れた俺など意に介さぬそぶりをしている。


「どうもこうも、護衛の依頼ですわよ」


 マリアの話によると、三日後に隣のアリオトの街を統治している伯爵の屋敷で社交パーティーが開かれるという。

 マリアはその社交パーティに招待され、アリオトの街へ行くことになったのだ。

 そしてその旅路の護衛として俺を指名したというわけだ。


「これは正式な依頼でしてよ」


 ドヤッと勝ち誇った笑みを浮かべているマリア。

 確かに、依頼は正式なものだし、街と街を行き来するのに普通は護衛を雇う。特に貴族の令嬢であるマリアは、強盗や身代金目的の誘拐の危険もある。

 だが……。


「なんでわざわざ俺を指名してくるんだ」

「それはもちろん、アッシュを信頼しているからですわっ」


 マリアが俺の腕を抱きしめる。


「アッシュ、顔が赤いではないか。熱でもあるのかのう」


 スセリが茶化してくる。


「アッシュさま……。あううううう……」


 プリシラはしょぼんと獣耳を垂らしていた。


「アッシュはこれよりわたくしの騎士となってもらいますわ」


 冒険者として依頼人の依頼を断るわけにはいかない。

 俺はもはや「うん」としか言えない状況まで追いつめられていた。

 そうまでして俺といっしょにいたいか、マリア……。


「ほう、見てみい。報酬はすこぶるよいぞ! ただの護衛の仕事でここまで高額な報酬はあるまい」

「ええ。報酬ははずみますわ」


 そういうわけで俺たち三人のはじめての仕事は、幼馴染のお嬢さま、マリアの護衛となったのであった。

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