19-5
村の山を占拠し、供物を要求している竜アスカノフ。
そいつを倒してほしいと俺たちは村長から依頼された。
「どうする? みんな」
スセリ、プリシラ、セヴリーヌの意見を聞く。
「無関係じゃと言って見過ごすわけにもいかんじゃろ」
「わたしたちで竜をやっつけましょうっ。冒険者として! メイドとして!」
「アタシはやんないからな」
俺を含めて賛成が3。反対が1。
多数決により俺たちは竜退治を請け負ったのであった。
村長邸を出ると、そこにはノノさんが立っていた。
どうやら俺たちを待っていたらしい。
ノノさんは先端に宝石がはめ込まれた杖を持っている。
竜退治する気満々だ。
「村長さんからアスカノフの退治をお願いされたんでしょう? いっしょにやっつけましょうねっ」
「ノノさん、俺たちが村に立ち寄らなかったら一人で戦うつもりだったんですか?」
「もちろんよー。私、こう見えて結構強いんだからー」
ぶんぶんと杖を振り回すノノさん。
あ、その杖、そういう使いかたするんだ……。
残念だが、竜と出会った瞬間、丸呑みにされて終わりだろう。あるいは炎の息吹で消し炭か。
「戦いは俺たちがしますんで、ノノさんは後ろで援護をお願いします……」
「わかったわ。錬金術以外にも初歩的な魔法なら使えるから、それで援護するわね」
セヴリーヌが俺たちに背を向ける。
「さっきも言ったけど、アタシはやんないぞ。せいぜい死なないことだな」
「みなさま、どうかお気をつけて」
セウヴリーヌはウルカロスを連れて宿屋へと行ってしまった。
ノノさんが首をかしげる。
「あのちっちゃな女の子は?」
「あの子がセヴリーヌですよ」
「まあっ」
驚くの無理はない。
セヴリーヌはどこからどう見ても小さな女の子なのだから。
俺たちはセヴリーヌが自分の時間を止めて不老の身になっていることを話した。
「時間凍結の魔法……。そんなすごい魔法を使えるなんて、さすがセヴリーヌさまだわー」
「そのせいで、あやつは永遠に生意気な小娘のままなのじゃがな」
肉体の成長を止める代償として、精神の成長も止めてしまったセヴリーヌ。
彼女のわがままで身勝手な性格は永遠に直らないのだ。
大人になることの大事さを、彼女はおそらく永遠に知ることはないのだろう。
「セヴリーヌさまにお願いしたら、私も永遠に若いままにしてもらえるかしらー」
「無理じゃろうな。なんの取引もなく、あやつが他人のために力を使うなどありえんのじゃ」
「そう……。残念ね」
そうして俺たちはアスカノフ討伐のため、山を登ったのであった。
村長の話によると、アスカノフは山頂に巣をつくっているらしい。
ふだんはそこに住み、ときおり村に降りてきて供物を要求してくるという。