18-7
知らなかった……。
まさかスセリの肉体がまだ残っていただなんて。
「万が一にでもセヴリーヌの協力を得られたときのために、死ぬ前に肉体を保存しておいたのじゃ。本当に、万が一のためにな。まさか本当にこやつの力を借りれるとは思わんかった。さすがじゃのう、アッシュよ」
のじゃじゃじゃじゃ、とまた変な笑い声を上げるスセリ。
セヴリーヌは不服そうな面持ち。
憎き恋敵に力を貸すのは不本意なのだろう。
「セヴリーヌさまの時間操作の魔法でスセリさまの老いた身体の時間を巻き戻して、若返らせる……」
「そこに魂であるワシが宿れば『稀代の魔術師』復活なのじゃ」
なるほど。そういうことか。
しかし、そうなると、俺たちはランフォード家に戻らなくてはならない。
二度と会うまいと縁を切った父上と再び顔を合わせることになるわけか。
「父上は俺をランフォード家に入れてくれるだろうか」
「初代ランフォード家当主のワシが命じれば入れるのじゃ」
そうだな。さすがの父上でも、初代の当主の命令には歯向かえないだろう。
とはいえやはり、あの家に戻るのは気が引ける。
「おぬしは堂々と帰ればよいのじゃ。後ろめたいことなどなにもしておらぬのじゃからな」
それでも気まずくなるのはどうしようもない。
父上も三人の兄たちも、俺にどんな顔をして接すればいいのかわからないだろう。俺だってわからない。俺についてきてくれたプリシラだって気まずいはず。
「スセリ。お前の子孫は嫌がってるようだぞ」
セヴリーヌが言う。
「ふむ……」
スセリは少し考えこんだ後、俺と正面から向き合う。
そして真剣な顔をしてこう頼んできた。
「アッシュ。ワシに力を貸してほしいのじゃ」
普段のふざけた態度はなりをひそめている。
「ワシは普段からおぬしをコケにしておるが、実際のところはおぬしがおらんとワシは魔書の中で永遠の時を過ごすこととなる。じゃが、肉体を取り戻せば話は別じゃ。おぬしも、こんなワシと二度と会わなくて済むことができるのじゃぞ」
「おい、スセリ。俺はスセリのことを嫌ってなんかいないぞ」
「なら、好いておるか?」
「好きっていうか、仲間っていうか……。まあ、どちらかというと好きだぞ」
「ほう。そうか」
スセリがニヤリとする。
しまった。言質を取られた……。
「なら、『どちらかというと好き』なワシのために力を貸してくれるな?」
どうやらさっきのしおらしい態度も演技だったらしい。
「わ、わかったよ……。ランフォード家に帰ろう。プリシラもそれでいいか?」
「わたしはどこであろうとアッシュさまについていきます」
そういうわけで俺たちは再びランフォード家へ帰ることになったのであった。
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