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18-6

 俺とプリシラが食堂へ行くと、そこにはセヴリーヌがいて、一人で本を読みながらジュースを飲んでいた。

 もしかしてまだ寝ているかも、と不安だったが、さすがにそこまで彼女はねぼすけではなかったようだ。


 よく見ると、彼女が読んでいる本は魔書『オーレオール』だった。

 部屋にカギはかけたはずなんだが……。

 まあ、『稀代の魔術師』と並ぶ彼女だからカギを開けるのなど造作もないのだろう。


「セヴリーヌ。お前から見てその魔書はどれほど価値があるんだ?」

「つまらんな。こんなもの駄作だ」


 嫌いなスセリの作ったものだからそう評しているのだろう。

 セヴリーヌはポイとテーブルに『オーレオール』を放り投げた。


「アタシならここに記されている魔法、ぜんぶ唱えられるぞ」

「全部ですかっ。すごいです、セヴリーヌさまっ」

「そうだ。アタシはすごいんだぞ」


 プリシラにおだてられたセヴリーヌは「えっへん」と胸をそらした。

 それが本当だとしたら、彼女が世界征服を企むような野望を抱く人間でなくてよかった。

 セヴリーヌが身体も心も永遠の少女であるのは、本人にとってもよいことなのだろう。


「ホウキに乗って空を飛べたりできますか?」

「飛行魔法か? そんなのかんたんだぞ」

「わたし、空を飛んでみたいですっ」

「わかった。それじゃあ外に――」

「待て待て、二人とも」


 外に出ようとするプリシラとセヴリーヌを俺が止める。

 いい加減本題に入らないといけない。


「今日はスセリの新たな身体を用意するんだろ?」

「ああ、そうだったな」


 つまらなそうに言うセヴリーヌ。

 本当に大丈夫なのだろうか……。

 と、そのとき、『オーレオール』から光の球が出現し、スセリが実体化した。


「いよいよじゃな」

「それで、どうやってスセリの新しい身体を用意するんだ?」

「セヴリーヌの得意魔法を使うのじゃよ」

「得意魔法?」

「時間操作の魔法じゃ」


 時間操作の魔法。

 それは言葉どおり、時間を進ませたり遅らせたり自由に操れる魔法だとスセリは言った。

 セヴリーヌは時間操作の魔法で自分の時間を凍結させ、永遠の命を得た。


「時間操作させ、ワシを若返らせるのじゃ」

「若返らせる……?」

「時間を遡行(そこう)させ、若いころの姿に戻すのじゃ」


 俺とプリシラは首をかしげる。

 若いころの姿に戻すもなにも、スセリの姿は今でも10代の少女だ。

 そもそもスセリは肉体を失った魂だ。

 魂の時間を操って肉体を得られるというのはおかしな話だ。


 わけがわからないようすの俺たちと見て、スセリはこう言った。


「実を言うとな、ワシの肉体はまだ朽ち果てずに残っておるのじゃ」

「なんだって!?」

「ランフォード家の封印の間に、老衰して死んだ直後の肉体が保管されているのじゃよ」

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