18-4
「いらっしゃいませ!」
覚悟を決めてアクセサリー屋へと入るや、若い女性の店員が明るいあいさつとともに俺とプリシラの前にやってきた。
「こっ、こんにちはっ」
「ど、どうも……」
「ウチはケルタスで一番のアクセサリー屋です。欲しいものがきっと見つかりますから、どうぞごらんになってください」
「ケルタスで一番ですかっ。アッシュさま。やはりこのお店を選んで正解でしたねっ」
純粋なプリシラはまたも店員の言葉をまに受けてよろこんでいた。
店員もそんな彼女が微笑ましいらしく、ににこにこしている。
完全に田舎からのおのぼりさんだな。俺たち……。
「なにか探しのものはありますか?」
「この子に似合うリボンを買いにきたんです」
「恋人さんに似合うリボンですね」
「こ、恋人ですかっ!?」
プリシラが裏返った声を上げる。
あわあわとうろたえだす。
「わ、わたしたちは恋人では――」
「リボンならこちらですよ」
否定する間もなく、俺たちはリボンが陳列されている棚へと案内された。
陳列棚にはたくさんのリボンが並んでいた。
赤色、青色、黄色……。さまざまな色と柄がそろっている。まるで蝶々の標本みたいだ。
目移りするな……。
「こちらはどうですか? お似合いですよ」
俺たちが迷っていると、店員が桃色の布地にハートの柄が描かれたリボンをプリシラに手渡してきた。
プリシラは手渡されたリボンを頭にかざす。
「に、似合ってるでしょうか……。アッシュさま」
「ああ。似合ってるぞ」
「とてもお似合いですよ」
「そ、そうですか……。てへへ」
それから店員は次々とリボンを取ってはプリシラに渡していった。
プリシラは鏡の前でさまざまなリボンを試着していった。
「アッシュさま。どのリボンが一番似合っていましたか」
「一番か……」
迷うな。
どれもプリシラに似合っていたから、一番となると迷う。
「わ、わたしはこれが一番気に入ったのですが」
そう言ってプリシラが俺に見せてきたのは、濃い青の布地に星の柄が描かれたリボンだった。
まるで夜空に星がまたたいているようだ。
「流れ星に三回願いごとを言えば、それが叶うという話、おぼえていますか? アッシュさま。このリボンをつけていれば、なんだか願いごとが叶いそうな気がするんです」
「……ああ。俺もそんな気がする」
「ですよねっ」
そういうわけで俺たちは星のリボンを買うことに決めたのだった。
店員に代金を支払い、リボンを購入する。
「プリシラ、動くなよ」
「ふえっ?」
「リボン、結んでやるから」
「……はい」
プリシラはきゅっと目をつむる。
俺は彼女の頭に手を伸ばし、獣耳の横辺りにリボンを結んであげた。
ゆっくりと目を開けたプリシラが鏡の前に立つ。
鏡に映る自分をぼうっと見つめている。
頭に手を伸ばし、リボンに触れる。
「かわいいな。プリシラ」
「……ありがとうございます。アッシュさま」
プリシラは顔をほころばせた。