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123/838

18-3

 西区の大通りを並んで歩く俺とプリシラ。

 昼間の大通りは行き交う人々で賑わっていた。

 冒険者とおぼしき身なりをした人や、船員らしき人、商人、街の住人……。いろんな人たちでごった返している。


 大通りの左右にはいくつもの露店が並び、さまざまな物を売っている。その多くは異国から持ち込まれた交易品だった。

 俺とプリシラはときおり足を止め、露店に陳列された見慣れぬ品物を眺めた。

 俺がペンダントを手に取り、プリシラの首にかける。


「似合ってるよ、お嬢ちゃん」

「てへへ……」


 店主にそう言われて照れるプリシラ。

 店主は商売でそうおだててるだけだろうが、似合っているのは確かだ。


「おじさん、これいくらですか?」

「アッシュさま!?」


 代金を支払おうとする俺をプリシラが慌てて止める。


「だ、だめですっ」

「いつも俺のためにがんばってくれてるプリシラへのプレゼントだ」

「そ、それは……」

「俺に日ごろのお礼をさせてくれないか?」

「それはメイドとしての使命ですからーっ!」


 プリシラはペンダントを外して店主に返すと、全速力でその場から立ち去ってしまった。

 に、逃げられた……。

 人ごみに紛れそうになるプリシラを俺は慌てて追いかけた。


 どうにかプリシラに追いつく。

 プリシラの獣耳はだらんと力なく垂れていた。


「も、申し訳ありません……。アッシュさまのご厚意をふいにしてしまって……」

「いや、かまわないさ。俺こそびっくりさせてごめんな」

「わたし、怖かったんです。あのときいただいたリボンのように、また台無しにしてしまうのではないかと……」


 まだ気にしていたのか。あのリボンのこと……。


「約束だったろ? あのリボンの代わりをプレゼントするって」

「い、いえ! でも、そんなもったいないです! わたしなんかに……」

「『なんか』じゃない。プリシラ『だから』プレゼントしたいんだ」


 きょとんとするプリシラ。

 い、今のはさすがにキザすぎたか……。

 恥ずかしくなった俺は視線をそらして頭をかく。


 視界の端にプリシラを捉える。

 彼女は自分の鼓動を確かめるように胸に手をあてていた。

 口をふにゃふにゃとさせている。

 喜んで……いるのか?


「アクセサリー屋に行って、新しいリボンを二人で選ばないか?」

「……はいっ」


 プリシラは元気いっぱいうなずいた。


 それから俺とプリシラは港へ行き、船を見て回った。

 港には船がいくつも停泊しており、その大きさに俺たちは圧倒されていた。こんな大きなものが海に浮くだなんて信じられなかった。


「いつか船に乗ってみたいな」

「楽しそうですねっ」


 そのあとは南区の繁華街を訪れた。

 木と布で組まれた粗末な露店が並んでいた西区とは異なり、ここは垢抜けた、しゃれた店が軒を連ねていた。

 アクセサリーを売る店を見つけたものの、俺たちは何となく場違いな気がして入るのをちゅうちょしていた。


「よ、よし。『せーの』で一緒に開けよう」

「か、かしこまりましたっ」

「せーのっ」

「ていやーっ」


 覚悟を決めて俺とプリシラは店の扉を開けた。

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