18-3
西区の大通りを並んで歩く俺とプリシラ。
昼間の大通りは行き交う人々で賑わっていた。
冒険者とおぼしき身なりをした人や、船員らしき人、商人、街の住人……。いろんな人たちでごった返している。
大通りの左右にはいくつもの露店が並び、さまざまな物を売っている。その多くは異国から持ち込まれた交易品だった。
俺とプリシラはときおり足を止め、露店に陳列された見慣れぬ品物を眺めた。
俺がペンダントを手に取り、プリシラの首にかける。
「似合ってるよ、お嬢ちゃん」
「てへへ……」
店主にそう言われて照れるプリシラ。
店主は商売でそうおだててるだけだろうが、似合っているのは確かだ。
「おじさん、これいくらですか?」
「アッシュさま!?」
代金を支払おうとする俺をプリシラが慌てて止める。
「だ、だめですっ」
「いつも俺のためにがんばってくれてるプリシラへのプレゼントだ」
「そ、それは……」
「俺に日ごろのお礼をさせてくれないか?」
「それはメイドとしての使命ですからーっ!」
プリシラはペンダントを外して店主に返すと、全速力でその場から立ち去ってしまった。
に、逃げられた……。
人ごみに紛れそうになるプリシラを俺は慌てて追いかけた。
どうにかプリシラに追いつく。
プリシラの獣耳はだらんと力なく垂れていた。
「も、申し訳ありません……。アッシュさまのご厚意をふいにしてしまって……」
「いや、かまわないさ。俺こそびっくりさせてごめんな」
「わたし、怖かったんです。あのときいただいたリボンのように、また台無しにしてしまうのではないかと……」
まだ気にしていたのか。あのリボンのこと……。
「約束だったろ? あのリボンの代わりをプレゼントするって」
「い、いえ! でも、そんなもったいないです! わたしなんかに……」
「『なんか』じゃない。プリシラ『だから』プレゼントしたいんだ」
きょとんとするプリシラ。
い、今のはさすがにキザすぎたか……。
恥ずかしくなった俺は視線をそらして頭をかく。
視界の端にプリシラを捉える。
彼女は自分の鼓動を確かめるように胸に手をあてていた。
口をふにゃふにゃとさせている。
喜んで……いるのか?
「アクセサリー屋に行って、新しいリボンを二人で選ばないか?」
「……はいっ」
プリシラは元気いっぱいうなずいた。
それから俺とプリシラは港へ行き、船を見て回った。
港には船がいくつも停泊しており、その大きさに俺たちは圧倒されていた。こんな大きなものが海に浮くだなんて信じられなかった。
「いつか船に乗ってみたいな」
「楽しそうですねっ」
そのあとは南区の繁華街を訪れた。
木と布で組まれた粗末な露店が並んでいた西区とは異なり、ここは垢抜けた、しゃれた店が軒を連ねていた。
アクセサリーを売る店を見つけたものの、俺たちは何となく場違いな気がして入るのをちゅうちょしていた。
「よ、よし。『せーの』で一緒に開けよう」
「か、かしこまりましたっ」
「せーのっ」
「ていやーっ」
覚悟を決めて俺とプリシラは店の扉を開けた。