17-7
「ヴィットリオさんの朝食、食べなくていいのか」
「食べるぞ」
俺を押しのけて廊下に出てくるセヴリーヌ。
さすがに上着一枚で外に出るのはまずいだろ……。
俺は彼女の肩をつかむ。
そして部屋に押し戻した。
「着替えてから出てこい」
それからしばらくしてセヴリーヌは着替えて出てきたが、まだ寝ぼけているのか、ボタンは掛け違えているし、髪は相変わらずぼさぼさだし、眠たそうな目には目やにがこびりついていた。
「ちょっと待ってろ」
俺はセヴリーヌの部屋からブラシを持ってきて、彼女の髪をとかす。
それからハンカチで目やにを拭う。
最後に掛け違えたボタンを直す――ところでプリシラが俺たちの前に現れた。
プリシラが「ふえっ!?」とすっとんきょうな声を上げる。
「ア、アッシュさま!? どうしてセヴリーヌさまの服を脱がしているのですか!?」
「こ、これはボタンを――」
「こいつ、アタシの身体をべたべたさわってくるんだ」
「ふええっ!?」
「誤解を生むような言いかたするなッ」
掛け違えていたボタンを直していただけだと説明し、すぐさまプリシラの誤解を解いたが、彼女はまだ俺を半分疑っているようだった。
「アッシュさまがディアさまの求婚を断ったのは、ひそかにセヴリーヌさまのことを……」
「だ、だから誤解だって……」
それからまだ半分眠った状態のセヴリーヌの手を引いて食堂に連れてきて、朝食を食べさせた。セヴリーヌは頭をふらふらさせながら、もぐもぐとパンとベーコンエッグを食べていた。
朝食を食べ終えたセヴリーヌは席を立ち、おぼつかない足取りで食堂を後にしようとする。
「チェックアウトの支度をしろよ。セヴリーヌ」
「アタシは寝るぞ」
「寝るのか!?」
「ねむい」
「今日はスセリの新しい身体を用意するんじゃないのか?」
「知るか。アタシはねむいんだ」
そう言ってセヴリーヌは去っていった。
スセリがため息をつく。
「あれは昼まで起きんじゃろうな」
「どうしましょう。スセリさま」
「どうもこうも、あやつがやる気にならんかぎりは始まらんからの」
セヴリーヌ次第というわけか。
今日中にスセリの身体を用意できるのか疑わしい。
「朝食も食べたし、ワシは『オーレオール』に戻るぞ」
光の球となったスセリはテーブルに置いてあった魔書『オーレオール』に入り、姿を消した。
残された俺とプリシラ。
「それではアッシュさま。わたしはヴィットリオさんのところへ行って食器洗いのお手伝いをしてきます」
「あっ、待ってくれ」
ぺこりとお辞儀をして去ろうとするプリシラを呼び止める。
「それが終わったら、いっしょにケルタスの街を見て回らないか?」
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